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たった10分で購入できる便利さ

 顧客はまず、カーバナのサイトかアプリで自身の住所や年収、生年月日などの情報を入力。すると、同社独自の与信管理システムで融資条件が決まる。その後、1万5000台以上の商品の中から欲しい車両を選ぶと、頭金や月額の支払額などが表示される。所有車の下取りも可能だ。自販機か自宅での引き取りの際にクルマを引き渡すだけでいい。「オンライン購入にかかる時間は10分程度」(同社)という。

 自動車ローンの提供では他社とも提携しているが、自社でも提供しており、顧客の7割がカーバナのローンを選んでいる。通常ならややこしい手続きが必要な自動車ローンを手軽にオンラインで受けられ、与信も迅速にしてもらえるのが大きな魅力になっている。

 実際、ユーチューブには、カーバナを絶賛する顧客による体験動画が多く上がっている。ある消費者は、月曜日の夜11時半にネットで購入。翌日には担当者と細かなやり取りをし、水曜日には車両が自宅に届けられたという。引き渡しに必要なのは運転免許証のみ。「もうディーラーには行かない。多少、高くてもカーバナで買う」と満足げだ。

 長年、同じ手法で売られてきた中古車市場に突如、現れたディスラプター(破壊者)。ここまで来ると気になってくるのが、創業者がどんな人かということだ。ここにも興味深い物語があった。

父親を取り巻く「黒いうわさ」

 共同創業者の1人でCEO(最高経営責任者)のアーネスト・ガルシア氏はスタンフォード大学卒で、まだ30代半ばの経営者だ。父親の経営する中古車販売会社のドライブタイムに入社し、12年に同社の子会社としてカーバナを設立した。14年にはスピンオフしてドライブタイムの傘下からは外れたが、その後も父親は19年5月に40万近くの株式を売却するまでカーバナの大株主であり続けた。

 注目すべきなのが、この父親だ。米フォーブス誌などの報道によると、父親はアリゾナ大学を中退後、ストックブローカー(株式仲買人)となり、その後、不動産開発業を始めた。その時の顧客の一人が、リンカーン・セービングス・アンド・ローン・アソシエーションという金融会社を経営するチャールズ・キーティング氏だった。このキーティング氏との取引に関連して1990年、銀行詐欺の容疑で父親は有罪を言い渡されている。

 だが、キーティング氏に関する情報を司法当局に渡すことで3年間の保護観察に減刑された。この事件は政界を巻き込む大きなスキャンダルに発展している。キーティング氏は自身への捜査に対して口をきいてもらえるようにジョン・マケイン氏ら5人の上院議員にカネを渡したなどとして有罪となった。

 アーネスト・ガルシア氏の父親は事件をきっかけに自己破産したが、その直後、アグリー・ダックリングという中古車販売会社を買収して経済界に復帰した。この会社がドライブタイムの前身だ。現在も父親は政財界の大物とつながりが強い。元副大統領のダン・クエール氏や金融業を営むビリオネアのマーク・ウォルター氏らと交友があり、前者はカーバナのボードメンバーに就任しているほか、ウォルター氏は上場前からカーバナ株を保有して多額の利益を手にしている。カーバナの強みである「ローンの手軽さと与信の迅速さ」は、父親のこうした政財界の人脈が少なからず貢献していることは間違いないだろう。

 カーバナは現時点ではまだ黒字化を果たしていない。創業者の父親を取り巻く黒い噂を吹き飛ばすためにも、まず早期の黒字化を果たすことが欠かせない。