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 車載センサーを手掛ける米国の新興企業が、米テスラCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏に挑戦状をたたきつけた。LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)メーカーである米クアナジー・システムズの共同創業者でCEOのロエ・エルダダ氏が、2019年6月に米サンノゼで開催されたセンサーの展示会で講演。その中で、「ライダーは価格が高くて完全自動運転車には要らない」という、マスク氏が常々語っている「ライダー不要論」に対して、「ライダーは自動運転に不可欠なプライマリーなセンサー。価格も今よりずっと安くできる」と、クアナジーが開発している安価なライダーを引き合いに出して反論した。

Sensors Expoで講演するエルダダ氏

 クアナジーは、ライダーの新興企業の中でも有力企業の1つ。いわゆる「ユニコーン企業(非上場で想定時価総額が10億ドル以上の企業)」で、想定時価総額が20億米ドルを超えるとされている。同社によれば、これまで1億8000万米ドルの出資を集めたという。パートナー企業として韓国・現代自動車や英ジャガー・ランドローバー、独ダイムラー、仏ルノー、日産自動車など大手自動車メーカーが名を連ねている。

価格を1/10以下に

 ライダーは、3次元(3D)情報を持った距離画像を取得するセンサーで、「カメラ(CMOSイメージセンサー)」や「ミリ波レーダー」に並ぶ、自動運転向け3大センサーの1つ。各センサーは一長一短があり、3つのセンサーで補い合うのが一般的である。ライダーは測距性能に優れ3Dデータの取得に向く。

 従来のライダーは距離を計測するレーザービームを機械的な可動部を利用してスキャン(走査)させる方式が主流である。性能は高いものの価格は数十万円以上。「ロボットタクシー」のような業務車両には可能だが、マスク氏の指摘の通り一般車両に載せるのは非現実的だ。

 そこで、可動部を撤廃する「メカレス化」によって、大幅なコスト削減と小型化を可能にし、かつ信頼性を向上させる動きが活発である。メカレス方式の採用で、500ドル以下を狙う企業が続出している。100ドル以下にすると息巻く企業もあり、クアナジーはその急先鋒(せんぽう)だ。

 クアナジーの最初のライダー製品「M8」はメカニカル方式で、価格は1000ドルだったものの、18年から出荷を始めた第2世代の製品「S3」はメカレス方式で250ドルと一気に1/4にできるとみる。150m先の測距が可能で画角は100度と広い。

 クアナジーはさらに低価格化を進める。S3は複数の半導体部品で構成する「マルチチップ」型だったが、これらを1つの半導体部品に集積する「1チップ化」で大幅にコストを削減し100ドル未満を狙う。自動車だけでなくスマートフォンへの搭載が射程に入るとみる。

クアナジーのライダー「S3」(出典:日経 xTECH)