ロボットやドローンでも

 鼻息が荒いクアナジーだが、新しい部品を市販車両に搭載するまでには時間がかかる。早くても2021年以降だ。そこで力を入れるのが車載用途以外だ。ライダーはロボットやセキュリティー用途など、ものや人を検知するさまざまな用途に適用できる。中でもクアナジーは、セキュリティー用途を車載と並ぶ事業の柱に据える。採用まで時間がかかる車載用途よりも、早い段階から収入を得られる事業と位置付ける。

 クアナジーはライダーを用いたセキュリティー向けセンサーシステムを手掛けている。ライダー「M8」と取得したデータから物体の検知・追跡・分類を可能にするソフトウエアで構成する。一般的な監視カメラに比べて3Dデータを取得できるのでより細かな監視ができるほか、周囲360度の広範な監視や赤外光を利用するため暗闇でも検知可能、といった点をウリにする。

 スマートシティーやインフラ監視、空港の監視、ドローンなどでの利用を想定する。既に、いくつかの実証試験を始めている。例えば、米国とメキシコの国境を監視する概念実証を始めている。ニューヨーク市の地下鉄では、線路内などへの不審者の侵入検知で導入されているという。19年7月には韓国のシステムインテグレーターと協力し、韓国の施設にライダーを利用したセキュリティーシステムを導入したことを明らかにした。

 さらに、次世代のモビリティー分野も視野に入れている。「空飛ぶクルマ(電動の垂直離着陸機)」における障害物検知などでライダーを適用できるとみて、パートナーシップの構築に注力している。講演では、クアナジーのセンサーを採用した2つの機体を紹介した。有志団体「CARTIVATOR(カーティベーター)」と同団体を母体とした新興企業SkyDrive(スカイドライブ、東京・新宿)が開発に取り組む機体や、英VRCOの機体である。

 メカレス・ライダーのライバルは多い。老舗の米ベロダイン・ライダーをはじめさまざまな新興企業がひしめく。クアナジーはその中で先頭集団にいるものの、そこから頭一つ抜け出すことができるか。車載用途に加えて、車載以外の用途を開拓できるかがカギを握るだろう。

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