米テスラは2019年4月、完全自動運転の実現に向けて重要な新機能を投入した。クルマに搭載されたコンピューターの判断で車線変更するもので、完全自動運転に向けて大きな一歩を踏み出したと言える。実際にどのような機能なのか。日本では未提供の機能を、米在住のテスラ車オーナーの協力を得て検証した。


テスラが今年4月に投入したのは「オートパイロット・レーンチェンジング」と呼ばれる機能だ。テスラは月に数回のソフトウエアアップデートを行い、機能を追加していく。ガレージに停車している夜間に更新され、まさに一晩で違うクルマに変わる。
オートパイロット・レーンチェンジングは、クルマが高速道路の各レーンや前後の状況をセンサーで把握して、自動的に車線を変更する。例えば、追い越しレーンにクルマが少なければ左に移ったり、高速の出口が近くなると段階的に右へ右へとレーンを変えたりする。従来は、ドライバーがウインカーのレバーを操作して、レーンを変えたい方向を指示する必要があった。

クルマ側で走行を自律的に制御する機能であり、テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が2020年に実現すると公言している完全自動運転に向け、最重要ともいえる機能だ。
この新機能は実際に使えるものなのか。テスラのSUVタイプの「Model X」を所有しているシリコンバレー在住の経営者、シバタナオキ氏に協力してもらった。
カリフォルニアの晴天の下、シリコンバレーを南北に貫く大動脈であるハイウエー101号でModel Xを走らせた。土曜日の昼すぎだったため、幸い特に目立った渋滞はなかった。
一般道を経て101号につながるハイウエーに入り、自動運転機能をオンにした。まずは従来の自動レーンチェンジを確認するため、ウインカーのレバーを操作してもらった。操作をすると、行き先のレーンの車間に十分なスペースができた時点でスムーズに車線を変更した。
次に今回の目的であるオートパイロット・レーンチェンジングを試してもらった。ただ、あくまでもクルマの意思で制御するので、すぐにというわけにはいかない。インターチェンジのカーブを曲がって、101号の6車線の広い直線に出て少し走ったあたりで、車内に「ポーン」という音が響いた。
これがレーンチェンジの合図である。自動的にウインカーを出して、車体の周囲にあるセンサーやカメラによる確認で問題がなければ、ハンドルがグググと自動で動いて車線を変更していく。「他のクルマの流れを見ながら、追い越しレーンにいったり、他のクルマの流れが速いようだと走行レーンに戻ったりする」(シバタ氏)。
今回、一番左のカープールレーン(2人以上の乗車で走行できるレーン)を走っていたのだが、右への車線変更を4回繰り返して移動した。車線変更時に周囲にクルマが接近しているなどの危険がある場合、ダッシュボード上でレーン部分が赤色で表示され車線変更を待つ。他のクルマがいるかどうかもグラフィカルに表示される。
テスラ車は車間距離を好みに応じて数段階で設定できる。こうした設定にもよるが、「道路が混雑している時は、クルマ側の判断が慎重すぎてレーンを変更しない場合もある」(シバタ氏)という。

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