企業や消費者の「借りすぎ」を助長しないか?
FRBが18年中、数回にわたって利上げを実施した理由の1つに、企業や消費者の「借りすぎ」を抑えることがある。金利がその国の経済状況に対して安すぎると、企業や消費者が銀行からカネを借りやすくなるのはもちろん、銀行が貸し出し条件を甘くする要因になり、結果、返済能力の低い借り手にカネを貸すことにつながる。貸し倒れリスクが高まるのだ。
この状況は08年のリーマン・ショック(07~08年の世界金融危機)にも重なる。実際、19年6月16日付日本経済新聞の記事「米企業は借りすぎか 金融の過熱、リーマン超え」によると、米企業の債務は膨らみ、質の低い借り手も増えているという。
米経済の安定化をつかさどるFRBが、必要な手立てをトランプ大統領の圧力で打てないのだとしたら……。次の金融危機が近々来るかどうかは別にして(実際、20年に金融危機が来ると唱える経済学者が米国内で見受けられるようになってきた)、米国は深刻な構造的課題を抱えていることになる。
借金しないと大学に行けない
もう1つの火種が「学生ローンの肥大化」だ。筆者は1990年代に米国の大学を卒業したが、当時、州立大学の学費は年間30万円(3000ドル)程度だったように記憶している。それが今、州内出身の学生で約1万ドル、州外の学生だと約3万5000ドルにまで上がっていた(ザ・クロニクル・オブ・ハイヤー・エデュケーションのサイトより)。これが私立ともなれば、さらに高額だ。例えば、同サイトによるとニューヨーク大学の2018年の学費は約5万2000ドルだった。
これでは一般家庭で子どもの学費を捻出できない。そこで登場するのが学生ローンだ。ニューヨーク連邦準備銀行の調査によると、いまや米国の消費者による借金の中で住宅ローンの次に多いのが学生ローンだ。その額、2019年第1四半期時点で合計1兆4900億ドル。自動車ローンの1兆2800億ドルよりも、クレジットカードの8500億ドルよりも多い。
さらにニトロ・カレッジの調査によると、1人当たりの平均借金額は3万7172ドル。社会に出る前にこれだけの金額の負債があると、家族をつくったり家を購入したりするタイミングが遅れ、米経済の成長に悪影響を及ぼすといわれている。
ちなみに、なぜこれほど大学の費用が上がっているかを地元の報道などで調べてみたが、どうやら教育への支援を手厚くしようと州や連邦政府が補助金を積み増した結果、大学側が設定額を上げるという皮肉な結果を招いてしまったようだ。つまり、「優秀な学生は何とか補助金を勝ち取って入ってくるだろう。ならばもともとの学費を高くして、資金力のある学生からはもっと取ろう」という心理が大学側に働いた。
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