ドナルド・トランプ米大統領が6月28~29日に大阪で開かれる20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に出席する。日本滞在中には、中国の習近平国家主席と会談する予定で、米中貿易摩擦が何らかの形で決着する可能性も出てきた。

6月18日、フロリダ州オーランドで2020年大統領選への出馬を表明したトランプ大統領(写真:Joe Raedle/Getty Images)
6月18日、フロリダ州オーランドで2020年大統領選への出馬を表明したトランプ大統領(写真:Joe Raedle/Getty Images)

 ニューヨークに駐在して約3カ月がたち、短いながらも間近で米国経済の動きを見ていて感じるのは、米中貿易摩擦が仮に決着したとしてもなお、持続的な成長のためには解決しなければならない課題が山積しているということだ。自動車業界を中心に、売り上げの多くを米国市場にゆだねる日本の企業は多い。今回は、米経済を揺るがしかねないその「火種」について考えてみたい。

 1つは、やはりトランプ大統領の存在そのものだ。トランプ大統領がこれまでの大統領と決定的に異なるのは、当選前の政治経験が全くないため、政治に対して良くも悪くも「先入観がない」ということにある。そのため、いわば怖いものなしでやりたい放題やってこられた。

FRBに口出し、パウエル降ろしも画策

 直近の例が米連邦準備理事会(FRB)への圧力だろう。6月19日、米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利の据え置きを決めた。その直後の会見でFRBのジェローム・パウエル議長は、今後、起こり得る景気減速に先手を打つことを視野に、早期利下げを検討していることを明かした。市場では早くも「7月に踏み切るのでは」との臆測が広がっている。

FRBは18年に引き続き19年も利上げに踏み切るはずだった。写真はパウエル議長(写真:China News Service /Getty Images)
FRBは18年に引き続き19年も利上げに踏み切るはずだった。写真はパウエル議長(写真:China News Service /Getty Images)

 この決断にどれほどの影響力があったかは分からないが、トランプ大統領はここ数カ月、執拗にFRBへ圧力をかけていた。6月に入ってからはその動きが加速。14日、トランプ大統領はテレビ局、ABCのインタビューに答え、「(FRBが2018年に)利上げをしていなければ、米国経済の成長率は少なくとも1.5ポイントは高かったはずだ」と話した。さらに18日、ブルームバーグの報道で、ホワイトハウスのスタッフにパウエル議長を合法的にやめさせる方法をひそかに探させていたことも明らかになった。

 権限の独立が保障されている機関へのあからさまな圧力は、それだけでも問題だとは思うが、本当にやっかいなのはその結果、米経済を本当の危機に陥れかねないことだ。

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