こうした取り組みの結果、マラッカ工場は同社の既存工場と比較して3割ほど生産効率を改善することに成功した。複合機関連製品の生産拠点として出発した工場はオフィス向け複合機本体を生産する主力工場に成長。生産台数は増え続けており、今年末には生産能力を3割引き上げる。
他社を巻き込む「バーチャル・カンパニー」
コニカミノルタの外部環境に依存しない拠点作りは、企業の垣根を越えて広がっている。
6月10日、マレーシア政府は複数の企業が共同で生産の効率化を模索する枠組み「スマート・インダストリアル・センター・マラッカ(SICマラッカ)」の開業式を開いた。コニカミノルタが主導して誕生した新しい企業連携の枠組みだ。足元では同社に部品を供給する日本、中国、マレーシアの企業を中心に13社が参加している。

参加企業はコニカミノルタのマラッカ工場近隣に新規工場や倉庫を順次稼働させ、コニカミノルタ側はマラッカ工場で培ったデジタル化や自動化のノウハウを参加企業に開放する。設備の稼働状況や生産計画、在庫データを各社が相互に共有し、生産を最適化する。ITシステムの導入や自動化も各社で進め、さらに共通する間接業務を集約したり、エリア内工場間の物流に自動搬送技術を導入したりして、まるで一つの企業のように統合されたサプライチェーンを構築することを目指す。
SIC運営の主体となるのは部品メーカーで、コニカミノルタはサポート役に徹する。参加企業はコニカミノルタ向けだけでなく、そのノウハウを活用して他社向けの生産も効率化できるし、SICの参加企業同士が連携して生産工程の一部を共通化したり、新しいユニット部品を開発したりできる。
自動車や家電など異業種の部品メーカーや完成品メーカーが枠組みに参画することも歓迎する。「結果的に我々もその恩恵を受け、サプライチェーン全体で競争力を高められる」とコニカミノルタの竹本充生・執行役生産本部長は期待する。
もっとも、SICはまだ始まったばかり。参画する企業が増えなければ、その効果は限定されるだろう。コニカミノルタのマラッカ工場での生産効率化の試みにしても、いつまで生産コストの上昇圧力に抗し続けられるかは不透明だ。
ただ、同じ課題に頭を悩ませる企業にとって、コニカミノルタの試みは選択肢になり得るのは確かだ。コスト上昇や地政学リスクに翻弄されるアジアの製造業の間で、同社のように外部環境に依存しないものづくりに取り組む動きが目立ってくるかもしれない。
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