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小池都知事が登壇するも東京は落選

 今回のエレベート・サミットのトピックは大きく2つある。1つは、米国外で初めてとなる実証試験の場所がオーストラリアのメルボルンに決まったこと。ダラスとロサンゼルスと同じく、20年に実証試験を開始する予定で、23年には本サービスの開始を目指しているという。

 これまでウーバーは、オーストラリアのほか、ブラジルやフランス、インド、日本の5カ国を候補に挙げていた。中でもウーバーが期待を寄せていたのが、東京だとされる。実際、ウーバー・エアに関するイベントを米国外で初めて開催したのは東京だった。18年8月に開催した「ウーバー・エレベート アジアパシフィック・エクスポ」だ。同イベントには東京都知事の小池百合子氏が登壇したが、東京は選ばれなかった。「墜落などのリスクを勘案すると、東京としてYesと言えなかったようだ」(ウーバー・エアの事情に詳しい複数の人物)。今回は選ばれなかったものの、「東京で実証試験を行うことはあきらめていない」(ウーバー関係者)という。

 新たな実証試験の場に選ばれたオーストラリアは、ウーバーが配車サービスの利用者を順調に伸ばしている市場だ。ハイヤー配車サービス「ウーバー・ブラック」を12年11月に、ライドシェアサービス「ウーバーX」を14年3月に開始し、右肩上がりで利用者が増加。18年6月には複数のユーザーで利用する「エクスプレス・プール」を開始し、さらに利用者を増やしている。現在、オーストラリアの37都市でサービスを展開し、月間380万人が利用しているという。こうした従来の配車サービスとウーバー・エアを組み合わせて、さらにウーバーのサービス利用者を増やす考えである。

まずはヘリで検証

 もう1つのトピックが、ヘリコプターを利用した移動サービス「ウーバー・コプター」の発表だ。同サービスはウーバー・エアの運用ノウハウの蓄積や事業収益化などを検証する役割を担う。

 ウーバー・コプターでは、利用者はまずウーバーXのような自動車のライドシェアや「ジャンプ」のような電動シェアサイクルのほか、バスや鉄道といった公共交通機関などの陸の移動手段で発着場まで移動する。次に、ヘリコプターで目的地そばの発着場まで飛ぶ。続いて着陸後、再び陸の移動手段で目的地まで向かう。複数の移動手段を利用する「マルチモーダル化」で移動時間の短縮を図る。ウーバー・エアでも同じ構図で、陸の移動手段と無駄なくシームレスに乗り継ぐことができるかが、利用者を増やす上で重要になる。

 そこでウーバーは、複数の手段でシームレスな移動を可能にするクラウド基盤を開発している。ウーバー・コプターは同基盤を利用する。そこで得られた知見をクラウド基盤の開発にフィードバックし、ウーバー・エアに向けて改良を施す狙いがある。

 さらに、ウーバー・コプターは、空の移動サービスをどのように収益化するのか、その実証という側面を持つ。同種のサービスに、エアバス・グループの「Voom(ブーム)」がある。エアバスも空のライドシェアに向けたeVTOL機を開発している。ブームでは現在、ヘリコプターを利用しつつ、将来のeVTOL機を利用した空の移動サービスの実証の場となっている。既にメキシコシティとサンパウロでサービスを開始している。すなわち、空の移動サービスで一歩先を行くエアバスをウーバーが追う形である。

 ウーバーはウーバー・コプターを19年7月からニューヨークで開始する。ダウンタウンの発着場からジョン・F・ケネディ(JFK)国際空港までの移動にヘリコプターを利用する。発着場まではウーバーXなどで移動し、その後ヘリコプターでJFK国際のヘリの発着場まで移動、そこからJFK国際空港のターミナルまで自動車で移動する。

 出発地からJFK国際空港までの「ドア・ツー・ドア」で、約30分で移動できるという。ウーバーXで移動した場合、およそ110分、鉄道と徒歩では82分かかっていたとする。値段は需給状況によるが、およそ200~225ドルと説明した。同業の米ブレード・アーバン・エア・モビリティーによる、JFK国際空港とダウンタウン間のヘリ移動サービスとほぼ同水準の金額である。

JFK国際空港とダウンタウン間を、ヘリコプターと従来の移動手段で移動した場合の 移動時間の比較。スライドはウーバー