中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)に対する英国のスタンスがなかなか定まらない。

 当初、英国はファーウェイ問題に関して独自路線を突き進むような姿勢を示していた。4月下旬、英国家安全保障会議がファーウェイについて、ネットワークの中核技術からは排除するが、携帯電話の電波を受信するアンテナなど中核技術以外は参入を認める方針と報じられた。同社の任正非CEO(最高経営責任者)が英BBCの単独インタビューを受けるなど、英国とファーウェイが特別な関係にあるのは明らかだった。

 英国は米国と同盟関係にあるうえに、米国と安全保障上の機密情報を共有する5カ国「ファイブアイズ」の一角でもある。その英国が独自調査に基づき独自の路線を打ち出したことに対して、英国の矜持を見せつけたと評価する声もあった。

 実際、英国の通信事業者はこれまで通信インフラにファーウェイの機器を使っており、次世代通信規格「5G」サービスでも同社製品を使う予定だ。英BTグループ傘下で携帯最大手のEEは5月末から5Gのサービスを始め、通信インフラの一部に中国ファーウェイの機器を使う。7月から5Gサービスを始める英ボーダフォンもファーウェイの機器を使う予定だ。

 だが、先の英国政府の方針は、最終決定ではないようだ。こうした状況に英携帯電話各社は不安を感じている。BBCの報道によると、携帯電話会社は英政府に対しファーウェイの位置付けを明確にすることを求める書簡の送付を検討している。ファーウェイの位置付けに不確実性が残るうちは、大規模なインフラ投資ができないためだ。

13年には当時の英財務相が中国のファーウェイ本社を訪問し、任正非CEOらと交流した(写真:代表撮影/AP/アフロ​)
13年には当時の英財務相が中国のファーウェイ本社を訪問し、任正非CEOらと交流した(写真:代表撮影/AP/アフロ​)

 英国の決定が揺れる背景には、米国からプレッシャーもある。ポンペオ米国務長官は5月上旬、ロンドンでのハント英外相との会談後に、「(5Gでの)安全性が保てなければ、確かな情報を分け合うのは難しくなる」と話した。

 6月上旬の大統領の訪英でも、ファーウェイは大きな議題となった。トランプ大統領は「英国とはファーウェイと他の全てで合意できる。我々は機密情報で深い関係があり、違いを乗り越えられる」と発言した。これに対して、英国政府は明確な方針を打ち出していない。  

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