ファーウェイの財務は非常に健全

 これほどの包囲網を敷かれた中で、果たしてファーウェイは存続できるのか。トランプ米大統領はファーウェイへの制裁を米中貿易交渉の取引材料と考えているようだが、米国の対中強硬派は国家安全保障の観点から本気で「ファーウェイつぶし」に取り組んでいる。安易な妥協はトランプ政権にとっても命取りになりかねない。

 だが、ある邦銀関係者は「ファーウェイは財務的には非常に健全だ。仮にコンシューマービジネスで中国以外の市場を失ったとしても会社が立ち行かなくなることはありえない」と指摘する。中国国内については、政府の規制によってもともとアプリ配信の「グーグルプレイ」をはじめ、アンドロイド搭載スマホで一般的なメールや地図といったアプリが使われていなかった。そのため、ファーウェイの独自OSもそれほど違和感なく受け入れられる可能性が大きい。

 ファーウェイの全世界の社員数は18万人以上と聞けば、工場に多くの人を抱え込む巨大メーカーを思い浮かべるのが普通だろう。だが、ファーウェイ製のスマホの9割は外部に生産委託している。一部内製しているのは、生産技術の革新についていくのが狙いだ。今回のように需要が急減した際のリスクを緩和することができる。

 一方で、価値が減ることがない技術や知財への投資は怠らない。2016年時点で全従業員の45%がR&D(研究開発)に従事していた。それから年々R&D投資は増え続け、18年の研究開発費は153億ドル(約1兆7100億円)と、売上高では倍以上の規模を誇るアップルのそれ(142億ドル)を上回っている。

 そこから浮かび上がってくるのは、「絶対に生き延びる」というファーウェイ創業者、任正非CEO(最高経営責任者)の執念にも似た思いだ。任CEOは早期から米国との決裂を予測し、最悪の事態でも存続できる組織を目指した。その結果出来上がったのが、研究開発と営業・マーケティングに特化した巨大IT企業という、現在のファーウェイの姿なのだろう。

 中国商務省は、中国の市場ルールを順守しない外国企業をリストアップする中国版の「エンティティー・リスト(EL)」をつくると発表した。また、中国政府は海外IT大手に「米国技術の輸出を打ち切れば深刻な結果に直面する」と警告したと報じられている。同国が世界最大の生産量を誇るレアアース(希土類)についても輸出規制を示唆した。

 ファーウェイ自身も米携帯通信大手のベライゾン・コミュニケーションズに対し、10億ドル(約1100億円)以上の特許料を要求していることが明らかになった。米国が関税以外の制裁措置を設ければ、中国もそれに応じた対抗策を用意し、お互いにダメージだけが積み重なっていく悪循環が続く。勝者なきチキンレースの終わりはまだ見えない。

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