アフリカ初の工場で低コスト生産

 モロッコ工場は、シーメンスとガメサという2つの企業の生産技術を生かせるという特徴がある。両社は17年に経営統合し、モロッコ工場がほぼ同時に立ち上がったため、双方の技術を持ち寄った。洋上か陸上、寒冷地か温暖地なのかなど、それぞれの需要に応じて、技術を使い分けて適切なブレードを生産していく。ブレードの生産は手作業によるところがあるため、モロッコ人が他の工場で長期間の研修を積み、技術を培ったという。

 風力発電市場は価格競争が激しく、ライバルの米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、18年度の風力発電事業の営業利益率が3%と収益悪化に苦しんでいる中で、シーメンスガメサは同5.3%と堅調だ。モロッコ工場に象徴されるような低コスト生産や多様な需要に応えられる強みが収益を支えている。

シーメンスガメサのモロッコ工場。風力発電機のブレード製造は手作業によるところが大きい
シーメンスガメサのモロッコ工場。風力発電機のブレード製造は手作業によるところが大きい

 コスト競争力を高めるために、風力発電機の巨大化を進めている。22年には直径が現状より約3割大きい193メートルの風力発電機を投入する。タケCEOは「大型化と同時に、25種類あった風力発電のタイプを9種類に減らしてコストを削減する」と語る。

 また、あらゆるモノがネットにつながるIoTも洋上風力発電のメンテナンスに活用しようとしている。従来は故障後に修理することが多かったが、IoTを使うことで事前に故障を予測し、効率的に修理できるようになった。故障で風力発電が停止する時間を減らし、発電量を増やせる。

シーメンスガメサのマーカス・タケCEO。シーメンス出身だが、同社からの独立経営を強調する
シーメンスガメサのマーカス・タケCEO。シーメンス出身だが、同社からの独立経営を強調する

 シーメンスは5月7日に火力発電向けタービンなどを手掛けるガス・電力事業を2020年までに分離・上場させると発表した。独立させる新会社にシーメンスガメサを合流させ、成長余力のある風力発電事業は稼ぎ頭として期待されている。タケCEOは、「風力発電事業はシーメンスから切り離された。経営の独立性がなければ、意思決定が遅くなる。独立しているからこそ、船は速く進むことができる」と強調する。

 今後は洋上風力発電のコスト競争がさらに激化しそうだ。競争入札の導入で20年代には1000キロワット時当たり50ドル程度まで発電コストが下がる予測がある。他の発電手段に比べてコスト競争力が高まり市場が拡大する一方で、コスト競争についていけないメーカーは市場から撤退を余儀なくされる可能性がある。新技術や市場変化への対応のスピードがますます重要になりそうだ。

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