洋上風力発電市場が急拡大している。
4月に世界風力エネルギー会議が発表したデータによると、2018年末の世界の発電容量は2300万キロワットと10年前に比べて約23倍の規模に拡大している。10年前は年間の新規の風力発電導入量に占める洋上風力発電の割合が1%未満だったが、18年は4.5%に拡大している。けん引しているのが英国やドイツなど欧州各国と中国だ。2018年の導入量では中国が40%、英国が29%、ドイツが22%を占める。
拡大の背景にあるのは、コストの低下だ。欧州においては5年前には1000キロワット時当たり230ドル(約2万5000円)ほどだった発電コストが、足元では120ドルほどまで低下してきている。日本では実証実験の段階だが、日本企業は商社などが欧州で多くのプロジェクトに参画している。
住友商事は18年12月にフランスで約100万キロワットの洋上風力発電プロジェクトに参画すると発表した。総事業費は約5000億円で、住友商事は同事業に29.5%を出資する。同社はこの他にも欧州で5件の洋上風力発電プロジェクトに参画するなど攻勢をかけている。三菱商事も欧州で数件の風力発電プロジェクトを手がけている。
この洋上風力の発電機メーカーで、5割超の世界シェアを持つのがスペインのシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジーだ。同社は17年にシーメンスの風力発電事業とガメサが統合して誕生した。シーメンスは04年にデンマークのボーナス・エナジーを買収し、風力発電事業に参入した後発組である。もともとボーナスは世界初の洋上風力発電所を作った経験があり、シーメンスは買収時も傍流であった洋上風力発電にいち早く力を入れ、建設やメンテナンスの技術で先行した。
風力発電の開発事業者にとって、風力発電の故障によって発電量が下がるのは最悪の事態だ。また洋上の場合は陸上に比べてメンテナンスコストが高くなる。その点で多くの実績を積むシーメンスは受注で有利に働いている。

シーメンスガメサの統合の象徴は、アフリカ初の風力発電工場であるモロッコ工場だ。同工場では風力発電の羽根(ブレード)を生産している。シーメンスガメサのマーカス・タケCEO(最高経営責任者)は「立地的に輸出に適しており、労働コストが安いために低コストで羽根を生産できる」と話す。実はブレードの製造は手作業の部分が多く、労働コストの安さは武器になる。記者が4月中旬に訪れた際には多くのモロッコ人が工場で働いていた。立地的に欧州やアフリカ向けだけでなく、大西洋を挟んだ北米や南米にも輸出がしやすいのも売りだ。
Powered by リゾーム?