「テスラを救う唯一の方法は、破産申請をして現在の資本をいったん消滅させることだ」

 2019年5月24日までに年初来4割安という株価急落に見舞われているEV(電気自動車)大手、テスラ。急落の理由を複数のアナリストに問い合わせると、こんな回答をしてきた「つわもの」がいた。クリーンエネルギーにまつわる技術や企業の調査を得意とするナビガントリサーチのモビリティー担当主任研究アナリスト、サム・アブエルサミド氏だ。

テスラの株価はこの3週間で急落した。5月6日に255.34ドルだった株価は、5月24日までに25%減の190.63ドルまで下がった。ヤフー・ファイナンスより(©2019 Verizon Media. All rights reserved.In partnership with ChartIQ)

 「そこまでは言い過ぎ?」と思ったものの、彼の分析をよくよく聞いてみると納得のいく部分が多かった。ここでは他のアナリストたちの見方や米国での報道、テスラ関係者の声なども踏まえながら、テスラが今、直面している真の課題について考えてみたい。

いよいよ資金繰りに窮する?

 急落の直接的なきっかけとなったのは、テスラが4月24日に発表した2019年1~3月期決算の内容だ。売上高は前年同期比33%増、18年10~12月期比で37%減の45億4146万ドル、最終損益は7億213万ドルの赤字(前年同期は7億955万ドルの赤字)だった。

 同社の資金繰りが逼迫してきていることも徐々に明らかになってきた。19年3月期の借入金は長期が97億8800万ドル、短期が17億600万ドルの計114億9400万ドル。前年同期が計107億6200万ドル(長期87億6400万ドル、短期19億9800万ドル)だったから、1年で7億ドルほど増えている。通期で一度も黒字を達成できていないことを考えると、膨らみ続ける借入金は見過ごせなくなってきた。

 投資家たちをさらに心配させたのが、5月初旬にテスラが発表した増資計画だ。2日に新株発行などによる20億ドルを超える資金調達計画を発表すると、「本格的に資金繰りが悪化しているのでは?」との臆測が広がっていった。

 決定打は、テスラのCEO(最高経営責任者)を務めるイーロン・マスク氏が5月16日、従業員あてに次のような電子メールを送ったことだった。

経営手腕が問われ始めたイーロン・マスクCEO(写真=AP/アフロ)

 「我々は第1四半期(2019年1~3月期)に7億ドル、月額にして2億ドルもの赤字を出したことを忘れてはならない。にもかかわらず投資家たちは我々の努力に対して協力的で、24億ドル(我々の手元に入る金額)もの資金を提供してくれるのだから、我々は財務的にサステナブル(持続可能)だとも言える」

 「これは本当にたくさんのお金だ。でも本当のところ、これだけ調達しても、第1四半期の赤字の出し方を考えればおおよそ10カ月で使い果たす計算になる」

 従業員を鼓舞するためと考えれば、10カ月で本当に資金がショートするとは考えづらい。ただ、このメールの内容がSNS(交流サイト)で広がると、多くの投資家たちがテスラの資金繰りへの疑念を強めたことは間違いない。

続きを読む 2/4 今までの「危機」と何が違うのか

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