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ゲーム専用機が不要に

 クラウドゲームが注目を集めるのは、ゲーム専用機がなくても高品質なゲームを楽しめるためだ。データセンターで演算処理した映像をスマートフォンなどに伝送する。処理性能が高いCPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理半導体)を備えたデータセンター、そしてデータのやり取りに必要な高速な通信インフラが整っていれば、テレビやタブレット、スマホでも専用機並みのゲームがプレイできる。ゲーム機が不要になる可能性があるだけに、ソニーなどにとっては脅威だ。

 従来のゲーム機メーカーもクラウドゲームに力を入れてきた。ソニーは12年にクラウドゲームの新興企業だった米Gaikai(ガイカイ)を約3億8000万米ドルで買収。同社の技術などを活用して14年にクラウド型のゲーム配信サービス「プレイステーション(PS) ナウ」を始めた。ソニー製品にとどまらず、他社のパソコンやスマートテレビなどへもサービスを展開してきた。

 ただソニーのゲーム事業の中核は13年に発売した据え置き型ゲーム機「プレイステーション(PS)4」。PS4の累計販売台数は19年度中に1億台を突破するのが確実で、有料のネットワークサービス「プレイステーションプラス」の会員数も19年3月時点で3600万超と好調だ。「ゲーム&ネットワークサービス事業」は同社の2期連続の最高益更新の原動力となっている。

 17年に発売された任天堂の「スイッチ」もヒットしたことから、「ゲームはやはり据え置き型で」という流れが強まり、一度はクラウドゲームへの注目度が低くなった。PSナウの有料会員数も2019年3月時点で70万と低調だ。

用意周到なグーグル

 こうした風向きを変えたのがグーグルだ。その本気度は周到な準備からもうかがえる。クラウドゲームの「頭脳」ともいえるサーバーでは、演算処理を担うプロセッサーで米半導体大手のアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)とタッグを組んだ。スタディアのサーバーには、処理性能が10.7T(テラ)FLOPS(1秒当たり浮動小数点演算回数)のAMD製GPUを搭載。グーグルによれば、これはSIEのゲーム機「PS4 Pro」のGPUに比べて2倍以上の処理性能がある。映像や音声の面で据え置き型ゲーム機並みの性能を備え、将来は高精細映像「8K」で、毎秒120コマ超のゲーム配信を視野に入れている。

 通信インフラに関しては、世界中のデータセンター間を結ぶ通信網や、世界に7500カ所以上のエッジコンピューティング用のノード(装置)がある。サーバーと端末間のやり取りで生じる遅延時間を短縮でき、世界中の複数のプレーヤーが遅延なく、ほぼ同時にゲームをプレイできるという。0.1秒以下の遅れでも勝敗を大きく左右する対戦型の格闘ゲームなどでは、遅延時間の短縮は必須だ。一時期クラウドゲームの注目度が低下した一因も、遅延時間の短縮に課題があったとされる。だが現在は次世代通信規格「5G」の実用化が始まるなど、通信の遅延を短縮する環境が以前に比べて整ってきた。

 さらにグーグルはスタディア向けに専用コントローラーを開発。一見すると一般的なゲームコントローラだが、音声アシスタント「Googleアシスタント」用のボタンや、プレイ中の映像を動画投稿サイト「ユーチューブ」で共有するためのボタンを搭載するなど、多様なプラットフォームを持つグーグルならではの独自性を打ち出している。

Stadiaの専用コントローラー(撮影:日経 xTECH)