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 にもかかわらず、中国政府がここまで過敏になっている理由は、米国との摩擦そのものよりもむしろ内政面にあると見たほうがよさそうだ。

 意外に思えるかもしれないが、一党独裁の強権的なイメージとは裏腹に、中国の政治運営は実はむしろ民主主義国家よりも「民意」に敏感な部分がある。習近平政権は革命を実現して英雄となったわけでもなく、英雄から直接指名されたわけでもなく、中国共産党の集団指導体制の中から誕生した。そこにネットの普及が加わり、思想統制が難しくなっている。民衆に配慮した政策を機敏にとる一方で、政権基盤を弱体化させるような事象を徹底的に封じ込めようとする二面性が生じているのはそのためだ。

 今年の6月4日は天安門事件から30年の節目。6月末に大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議では第4弾発動を目前に控えたタイミングで米中首脳会談が実現する公算が大きい。

 米国はかつて中国が経済成長とともに民主化すると期待していた。89年の天安門事件は民主化を求める大きなうねりだったが、結局、鄧小平氏が武力で抑え込み、民主化の芽はついえた。一方で鄧氏が主導した改革開放路線によって中国の経済成長は続き、事実上の一党独裁体制のまま、米国と覇を競う大国になった。

 米中の貿易交渉では中国の知的財産権の侵害がテーマになっていることからも分かる通り、米中の争いは民主主義国である米国の価値観をこれまで以上に中国に認めさせる争いとも言える。中国政府は30年という節目を迎える民主化運動の記憶と米国からの圧力が結び付くことを恐れているのかもしれない。中国政府のピリピリモードと現地メディアや市場関係者の「忖度(そんたく)」にはさらに拍車がかかりそうだ。