「CEOの年収は4300万ドル、我々の時給は9ドル」
5月8日正午、米ライドシェア大手、ウーバーテクノロジーズの本社の前には100人を超える人だかりができていた。集まったのはウーバーや同業のリフトのドライバーたち。冒頭の文言が記された横断幕を掲げ、ウーバー本社の周辺をデモ行進した。デモに加えてアプリをオフにするストも呼びかけられ、ごく一部のドライバーが参加したもようだ。

ドライバーのデモから2日後の5月10日、ウーバーはニューヨーク証券取引所に上場した。時価総額は約760億ドル(約8兆3600億円)。米ブルームバーグによると、米国で9番目の規模のIPO(新規株式公開)となり、2014年の中国・アリババ集団以来だという。
ただ、上場後の株価は振るわない。IPO時の売り出し価格を45ドルと、事前想定の44~48ドルの下限に設定したものの、上場初日から株価は下落。米株式市場の軟調もあるが、14日の終値は39.96ドルと、40ドルを割り込んだ。3月に上場した同業のリフトはさらに売り込まれている。3月29日の初値は87.24ドルと売り出し価格の72ドルを2割以上上回った。ただ、5月10日の終値は51.09ドルと初値を3割も下回っている。

評価額10億ドル以上のユニコーン企業の代表として、注目されたライドシェア2社の株価が低迷しているのは、投資家らが両社のビジネスモデルの将来性を疑問視し始めているからだ。
1つ目の課題は、冒頭のデモに象徴されるドライバーとの関係だ。
390万人ものウーバーのドライバーは正社員ではない。アプリを通してウーバーから配車の依頼を受ける“個人事業主”だ。案件ごとに個人に仕事が発注される「ギグエコノミー」の典型例である。当然ながら労働組合はないので、5月8日のデモはソーシャルメディアやウェブサイトを通じて告知された。
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