ソールレベルズでは、多種多様な靴を一つずつ手作りしている。使用済みタイヤを靴底に使い、天然素材の糸を織って靴のアッパーを作り上げている。

 工場に入るとまず目に飛び込んでくるのが織機だ。「エチオピアには機織りの伝統技術がある。靴のアッパーにそのテイストを生かすことができる」とアレム氏は言う。7台ほどの織機が並び、色とりどりの様々な模様の布を織っていく。男性たちが音楽を奏でるかのようなリズムを取りながら、縦糸と横糸を織り成していく。

靴のアッパー部分は織機で織り上げていく
靴のアッパー部分は織機で織り上げていく

 この織物がソールレベルズの売りだ。手作りであるため、二つとして同じものがなく、独特の風合いが出る。主に女性たちがこの織物を靴のサイズに合わせてミシンで縫い、接着剤で接合し、縫合部をたたき、端材を切り、形を整える。最後に使用済みタイヤを使った靴底と組み合わせて、靴が完成する。

機織り職人はこの手で、器用に織物を作り上げていた
機織り職人はこの手で、器用に織物を作り上げていた

 ソールレベルズの靴は、世界的に注目されるキーワードにも合致した。使用済みタイヤを活用しているため「エコロジー」であり、製品の販売を通じて地域住民の自立に貢献する「フェアトレード」の側面もある。これらを統合した意味で「エシカル商品」にも当てはまる。

 ただそれだけではない。アレム氏自身が世界のトレンドなどを調査して、頻繁に新しい靴のデザインを考案。そのデザイン性が評価され、複数の靴を購入する客もいる。中心価格帯は1足当たり55~95ドル(約6200~1万600円)で、ドイツや台湾など海外に10店舗以上を持つ。インターネット販売にも力を入れており、世界中から注文できる。

地元の雇用に対する使命感

 エチオピアの首都アディスアベバの貧困な地域に生まれたアレム氏は、3人の兄弟と分け隔てなく育てられた。「女性だからという理由で、家での役割が変わったことはほとんどなかった」と振り返る。

 「父親がどんなに働いても、子供たちに十分な食べ物を与えられるほどの賃金を得られなかった」。こうした少女時代の経験が起業の原点になっているようだ。

 アレム氏が22歳の頃に就いた仕事は給料が非常に低く、サステナブルではなかった。こうした境遇の中で、自らサステナブルな仕事や生活を作り出したいという思いが募り、自ら事業を起こすことに傾いていった。そんなアレム氏が起業のヒントを得たのは、地域の人々の営みだった。人々が使用済みタイヤを加工して自分の靴を作っていることに着目したのだ。

アレム氏は地域の人々の雇用を最も重視する
アレム氏は地域の人々の雇用を最も重視する

 アレム氏はハンド・メイドにこだわっている。それは手作り感を出すという商品コンセプトと同時に、地元に人たちの雇用を考えているからだ。「定職がなく貧困から抜け出せない人たちをたくさん見てきた。そうした人たちに持続的な仕事を提供したい」。アレム氏は力を込める。

 その思いは近く結実する。現在、新しい工場を建設しており、今年中には完成する予定だ。完成すれば「2万人以上の雇用を生み出せる可能性がある」と話す。「世界的な表彰をたくさん受けてますね」と水を向けても、そっけない。「表彰で雇用が生まれるならいいけど、そんなに簡単ではない。とにかく雇用を生み出したい」。

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