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 4月4日、エチオピア政府はエチオピア航空の米ボーイング製737MAX機の墜落に関する調査結果を公表した。記者会見に臨んだのは、ダグマウィット・モゲス氏という女性の運輸大臣だ。エチオピアは42歳と若いアビー首相が様々な改革を実行しており、その1つとして大臣ポストの半分を女性が担っている。

 3月4日号特集「逆説のアフリカ」で紹介したように、アフリカの各国では政治だけでなく、ビジネスでも多くの女性が活躍している。その中でもエチオピアの起業家、ベツレヘム・アレム氏は突出した存在だ。2005年に靴メーカー「ソールレベルズ」を創業し、これまで5000人以上を雇用。16年にはカフェ「ガーデン・オブ・コーヒー」を立ち上げた。

 11年にスイス・ダボスで世界経済フォーラムからヤング・グローバル・リーダーに選ばれ、12年には米フォーブス誌から「最も成功しているアフリカ人女性」に選出されるなど、多くの表彰を受けてきた。アフリカンドリームを体現する女性起業家である。

 取材のためにアレム氏から指定された場所は、エチオピアのアディスアベバ市内のバス停だった。市内の国際機関などが集まる中心部から西方面に進むと、バラックの建物が目立ち始め、多くの人が往来する街道を抜けると目的のバス停に着く。

 そこからアレム氏に電話をかけ、ソールレベルズの工場まで誘導してもらった。こうした面倒な連絡が必要なのは、首都のアディスアベバであっても明確な住所がない土地が多いからだ。

 ここがオフィスなのか? 疑問に感じたのは、たどり着いたのが建設中の建物だったからだ。たたずんでいると物珍しそうに周囲から人が集まってくる。

 意を決し、火花を散らして工事が進む入り口を通り抜ける。2階に上がってもフロアはコンクリートむき出しで何もない。ところが3階に上がると突如、整備されたフロアが現れ、広い空間の中にポツンといくつかのデスクとソファが置かれていた。ここがオフィスだった。

 奥のデスクから小柄なアレム氏が現れた。机の上には商品化したばかりのフルーツスナックが並ぶ。「エチオピアでも健康志向が高まっているから、これからカフェで売っていくのよ」。悠然とした動きと言葉がはっきりと伝わる話し方、そして時折見せる笑顔が人々をひきつける経営者だと分かる。

靴メーカーのソールレベルズ、カフェのガーデン・オブ・コーヒーを創業したベツレヘム・アレム氏(写真:永川智子、以下同)

 「まずは作っているところを見たいでしょ」。アレム氏に誘われて、さっそく靴の工場に向かった。工場の入り口に近づくと、「カツン、カツン」とハンマーで何かを叩く音や、「ガサ、ガサ」と規則正しく何かを動かしている音が聞こえてきた。