5月の新規株式公開(IPO)を控え市場の注目を集める配車サービス大手の米ウーバー・テクノロジーズだが、本国の米国では同社を中心とした配車サービスに逆風が吹いている。「攻撃」の最前線を走るのがニューヨークだ。

同市は今年1月から、マンハッタンの特定地域を走る配車サービスの車両に1乗車ごとに一律2.75ドルのフィー(料金)を課すようになった。配車サービスの車両がマンハッタンの渋滞を引き起こしていると市は考えているからだ。同時期にイエローキャブにもフィーを課すようになったが、金額は2.5ドルと配車サービスに比べて少ない。この課金の影響でイエローキャブの初乗り運賃は2.3ドルから5.8ドルに跳ね上がった。フィーの設定が業界全体に及ぼす影響の大きさが分かる。
ウーバーのドライバーは、このことについてどう思っているのだろうか。利用するたびに聞いてみると、最も心配しているのは顧客が減ることのようだった。ところが、聞き続けているうちに他の人とは少し異なる視点で持論を展開するドライバーに出くわした。中東から移住してきたらしいそのドライバーは言った。
「ウーバー(の車両)が増えすぎたから政府が規制するのは当たり前さ。でもウーバーがこれだけ増えて誰が一番、得をしたと思う? カーディーラーだよ」
ウーバーのためにクルマを買う
その意味をすぐにはのみ込めずにいると、彼は自ら説明を始めた。
「ウーバーのドライバーになるためにクルマを買う人は多いんだ。僕もそう。前はトヨタの『RAV4』に乗っていたけど、古くなっていたから兄弟に売って、新しくベンツを買ったんだ。顧客の受けがいいからね。しばらくはレンタカーだったんだけど、週に400ドルもかかるから買った方が安いと思って……」
筆者は少し混乱していた。ウーバーのビジネスモデルの醍醐味は、車庫に眠るクルマの有効活用ではなかったのか? 配車サービスは人々をクルマの保有から遠ざけ、クルマを多く売りたい自動車メーカーの敵ではなかったのか?
いや、もしかすると、トヨタ自動車など名だたる自動車メーカーがウーバーなどの配車サービスに出資している理由の一つがここにあったのかもしれない。ニューヨーク特有の事情である可能性はあるが、配車サービスはクルマの購入を増やす要因になっていたのだから。
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