全2195文字

 「アップルに対してオープンだ」

 4月14日、米CNBCとのインタビューで自社製5Gチップを米アップルに売る可能性があるのかと問われた中国・華為技術(ファーウェイ)の創業者、任正非CEO(最高経営責任者)はこう答えた。

 アップルは米クアルコムと特許料支払いをめぐる訴訟を抱えていた。次世代通信規格「5G」対応スマホ向け半導体チップを開発できる企業は事実上ファーウェイ、クアルコム、米インテル、韓国サムスン電子、台湾の聯発科技(メディアテック)に限られる。しかし、アップルと提携関係にあるインテルは5Gチップの開発に苦戦。アップルが5G対応スマートフォンの発売で後れを取ることは避けられないとの見方が広がっていた。

 世界各国のメディアが任CEOの発言を大きく扱ったが、騒動は数日で収束した。アップルが16日、クアルコムと全面的に和解してチップの供給も受けると発表したからだ。急転直下の和解については、5G対応で遅れることを嫌気したアップル側が妥協を迫られたとの見方が強い。同日、インテルは5Gチップの開発から撤退することを発表した。

 ただ任CEOは「オープン」とは発言したものの、実現の見込みはほとんどなかっただろう。ファーウェイは「アップルとの交渉の事実はない」としており、もし仮に交渉を進めていたとしても、米政府とファーウェイの現在の関係を考えれば、アップルがファーウェイのチップを使うとは考えにくい。

 むしろ注目すべきポイントは任CEOが「5Gチップの外販を否定しなかった」ことだ。ファーウェイの基地局向けとスマートフォン向けのチップ開発は半導体子会社の海思半導体(ハイシリコン)が担っており、ファーウェイの競争力の源泉とされる。そのためハイシリコンがファーウェイ以外に半導体を供給することは、これまでなかった。

 実は任CEO発言の数日前に、ファーウェイ幹部が「外販」の可能性に触れている。中国ネットメディア「36Kr」などは11日、ファーウェイの消費者向け端末事業グループの余承東(リチャード・ユー)最高経営責任者(CEO)が「5G半導体の(外部への)販売は開かれている。アップルが使いたいのなら賛同する」と発言したことを伝えている。CNBCによる任CEOへの質問はこれを踏まえたもので、任CEOも承知の上で同様の発言を繰り返したことになる。