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 筆者がニューヨーク支局に赴任して間もない4月3日、とあるニュースに目が留まった。「ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーターとトヨタ自動車、自動運転の試験・標準化で連携」というロイターの記事だ。日本でも報道されていたので、ご存じの方も多いだろう。

 記事の内容はおおよそ次の通りだ。トヨタなど3社は、米国の自動車規格の業界団体である米自動車技術者協会(SAE)と「Automated Vehicle Safety Consortium(自動運転車安全コンソーシアム)」と名付けた組織を作り、データ共有や安全試験のガイドライン、歩行者やクルマ以外の乗り物とどう道路を共有するかなどの基準づくりを進める。連邦政府に対して自動運転関連の規制整備を促す狙いもある。自動運転の技術が確立していても、法整備が進んでいなければ普及しないからだ。

GMが開発した自動運転車(写真:ロイター/アフロ)

 注目すべきは、米国内の法整備に向けた取り組みにトヨタも加わっている点だ。調査会社マークラインズによると、トヨタの2018年の米国における新車販売シェアは14%で、GM(17.1%)、フォード(14.4%)に次ぐ3位だった。トヨタにとって米国は重要な市場。その国が目指す方向を決める動きに当初から関われる意義は大きい。だが、それだけではない。

「自動運転?NO!」の風向き変えた運輸省

 ここ数年、米国では自動運転車に対して世間から厳しい目が向けられていた。16年には自動運転(実際には運転支援)中だったテスラの車がトラックに突っ込み運転手が死亡。18年3月には実験走行中だったウーバーテクノロジーズの車両が人をはねて死亡させた。世論が自動運転反対に傾いたことから、多くの政治家が法整備に二の足を踏むようになった。自動運転先進国とされていた米国ですら、自動運転に向けた法整備が進んでいなかったのはこのためだ。

 そんな風潮をがらりと変えたのが米運輸省だった。18年10月に「未来の交通に向けた準備:自動運転車3.0(Preparing for the Future of Transportation:Automated Vehicles 3.0)」と題した政府方針を発表。法整備する側として下記の6つの原則を掲げた。