2018年、中国の新車販売台数は2.8%減の約2800万台で28年ぶりの減少となった。自動車減税の終了や米中貿易摩擦の影響による消費者心理の悪化などが要因として指摘されている。ところが日系自動車メーカーの関係者からは、なぜかそれほど厳しい現状を嘆く声は聞こえてこない。

 実は日系メーカーの18年の新車販売台数(乗用車)を合わせると約445万台となり、17年実績を約24万台上回っている。豊かな消費者が増えるにつれて品質面で定評のある日系メーカーが再評価されており、ブランドとしての優位性を享受できる局面に入りつつある。中国市場自体が踊り場にあるのは事実だが、中長期的には3500万台市場となるポテンシャルがあるとされる。ホンダは4月中に湖北省武漢市で新工場を稼働させる。日産自動車、トヨタ自動車も中国での生産増強を計画しており、各社ともアクセルを緩める気配はない。

 対照的に厳しい立場に置かれているのが、現代自動車や傘下の起亜といった韓国勢だ。中国自動車工業協会などによれば16年から17年にかけて韓国勢の乗用車新車販売台数シェアは7.35%から4.63%へと大幅に下降した。17年にシェアが大幅に落ち込んだ直接のきっかけは同年3月にTHAADミサイルを配備したことで、中国人の対韓感情が悪化したことだった。18年はわずかに回復して4.98%になったが、低水準で推移していることは変わらない。

韓国車の中国での存在感は薄くなっている(写真:ユニフォトプレス)
韓国車の中国での存在感は薄くなっている(写真:ユニフォトプレス)

 だが、ミサイル配備問題からはすでに2年以上が経過しており、大方の中国人はそんな問題があったことはすでに忘れているか、もう気にかけていない。それにもかかわらず韓国勢のシェアが回復しないのはなぜか。

 韓国勢の中国自動車市場におけるシェアの直近のピークは14年の9.0%。そこからジリジリとシェアを減らしつつある中で、ミサイル配備問題が起きた。これは吉利汽車(ジーリー)や比亜迪(BYD)など中国の地場メーカーが台頭してきた時期と重なる。競争力のある商品を打ち出せず、独フォルクスワーゲンや日本勢と品質向上が目覚ましい中国勢に挟み撃ちされるという、根本的な問題を解決できていないため復活が遅れている可能性が高い。

 これは少し前まで日本勢が置かれていた状況とも重なる。現代自動車は徹底的に日本車をベンチマークして商品を開発し、コストパフォーマンスの高さで日系メーカーを追い上げていた。12年の尖閣諸島問題が発生して反日感情が高まった影響もあり、日系メーカーは苦戦を強いられた。今は、現代自動車がその立場にあるわけだ。

 3月上旬、現代自動車が北京にある最も古い工場の操業を停止するとのニュースが伝えられた。現代自動車は現在、中国における保有生産能力の半分ほどしか活用できていないとされる。生産能力の過剰を解決する経営判断としてはやむを得ないものだろう。

 現在は居心地の良いポジションにいる日本勢も安穏としてはいられない。現代自動車がリストラに成功して反転攻勢をかける可能性だけではない。中国勢が着実に差を詰めているからだ。

 自動車業界では接続性、自動運転、共有、電動の英語の頭文字をとった「CASE」と呼ばれる潮流が加速している。中国では自動運転分野で世界のトップを走るとされる米グーグルが活動を制限される一方、「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)や配車大手の滴滴出行などがそれぞれ自動車分野への投資を行っている。中国でのCASE対応には、こうしたプレーヤーと組むことが欠かせない。

 中国の自動車市場は他地域とは異なる技術を取り入れなければ生き残れない、特殊な市場になろうとしている。この異形の世界最大市場にどう相対するか。それは日本の自動車産業の行く末にも大きな影響を与えることになる。

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