中国大手デベロッパーが手がける大規模都市開発プロジェクトで、マンションや戸建て住宅、ホテル、ショッピングモールなどの建設が進む。マンション価格は60平方メートルの物件で約50万リンギット(約1340万円)と、平均月収が2500リンギット前後(約7万円)のマレーシア住民が購入するのは難しい。主な顧客は中国人投資家で、資産運用の対象や別荘として人気を集めた。その余波で周囲の不動産価格も高騰し「容易に住宅が買えなくなった」(ジョホール州のタクシー運転手)という。

 そこでマハティール首相は昨年8月、中国人の投資家を念頭に、フォレストシティーの住居を外国人に販売せず、査証(ビザ)も発給しない方針を打ち出した。だが、今になっても目立った進展はない。「マハティール首相の発言で、客が少し減ったのは事実。ただ大きな影響は出ていない」。フォレストシティーの販売担当者はこう話し、ビザの発給停止や外国人に対する販売禁止といった政策が実現することもあり得ないと楽観的な見通しを示した。ジョホール州政府やスルタン(イスラム王侯)は経済発展に中国の投資が不可欠だと考えており、「最終的には州政府とスルタンが守ってくれる」と見ている。

親中の前大統領の首相就任騒動で混乱

 スリランカでは2015年まで政権を率いた前大統領が中国の資本を次々と受け入れた。返済の見込みが立たないまま借金を重ね、採算が見込めない空港や港をつくった。これを国民が問題視し、同年の総選挙での政権交代につながった。中国に対し慎重な姿勢を示すシリセナ氏が新大統領に就任した。

 だが対外債務は既に危機的な水準にまで積み上がっていた。手足を縛られたシリセナ大統領は経済を立て直す有効な政策を打ち出せず、国民の支持を失う。その結果、前大統領に対する国民の人気が復活するという皮肉な事態が起きた。

 支持回復を狙うシリセナ大統領は昨秋、政敵だったはずの前大統領を首相に据えるという荒業に打って出た。議会や司法が強硬に反発したため、すぐに辞任を迫られたが、この騒動はスリランカの中国依存の根深さと、方針転換の難しさを改めて浮き彫りにした。

 スリランカの苦境を目の当たりにするアジア諸国が中国の進出に対して警戒感を抱くのは当然といえる。ただ自国の資本は不足し、中国に代わる支援国が現れる見込みもない。結局、中国の覇権主義を恐れつつも、一帯一路構想から背を向けられなくなっている。

 英紙ガーディアンによると、フランスのマクロン大統領は習主席に対し、関係強化の条件として「欧州が一体であることを尊重してもらう必要がある」と述べた。また欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長も「中国と欧州は戦略的なパートナーであると同時にライバルでもある」と習主席に伝えたという。一帯一路構想に対してEU加盟国間の足並みがそろっていないことを危惧し、EUとして中国に対応していく姿勢を改めて示したものとみられる。

 巨大な中国に対して一国で立ち向かうのではなく、多国籍の枠組みをつくって対抗する。その考え方は、相対的に経済規模の小さいアジア諸国でこそ有効かもしれない。各国がそれぞれに、ぽつぽつと中国に慎重な姿勢を示しても、結局は中国に押し切られるのがオチだ。各国が足並みをそろえて一帯一路の覇権主義的な部分に対抗し、対等な立場で互恵的な関係を構築できるような枠組みが必要なのかもしれない。

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