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 中国が提唱する経済圏構想「一帯一路」が欧州で拡大している。習近平(シー・ジンピン)国家主席が各国を歴訪し、3月23日にはイタリアと一帯一路に関する覚書を交わした。両国はイタリア北東部トリエステの港湾機能の強化から製鉄所の建設、イタリア製品の中国への輸出促進まで幅広く連携するという。

 ブルームバーグなどの報道によれば、経済効果は総額200億ユーロ(約2兆4850億円)に及ぶという。中国は25日にもフランスとの間で約400億ユーロ(約5兆円)の商談成立にこぎ着けた。

中国の習近平国家主席は欧州を歴訪し、イタリアを経済圏構想「一帯一路」のメンバーに引き入れた(写真:AFP/アフロ)

 欧州では既に多くの国が中国への依存を深めている。一帯一路に関する覚書を交わしているEU加盟国は東欧を中心に13カ国に上り、合意を結んでいない国にも中国の資本が急速に流入している。中国商務部の資料によれば、たとえばオーストリアへの直接投資残高は2009年末から2017年末の間で549倍に増え、スウェーデンでは65倍、オランダで55倍に拡大。EU加盟国全体に対する投資残高は2009年の62億ドルから2017年には860億ドルと8年で約14倍に急増した。

 欧州で高まる中国の影響力は、ついにEU主要国でありG7メンバーでもあるイタリアに及んだ。他のEU加盟国や米国からは批判や懸念が出ているというが、この動きに衝撃を受けているのは、一帯一路構想の沿線に位置するアジア諸国かもしれない。経済力があり、アジアの民主化について関心の高い欧州ですら、中国の資本に依存せざるを得ないことが改めて浮き彫りになったからだ。

対中強硬になりきれないマレーシア

 アジアでは近年、中国に対する警戒感が高まっていた。マレーシアやスリランカ、モルディブでは政府が過度に中国に依存したことが嫌気され、政権交代も起きている。だがインドの支援を最大限に受けているモルディブを除き、マレーシアやスリランカの「中国離れ」は難航している。

 マレーシアでは、親中派のナジブ前政権に批判的なマハティール氏が昨年5月の総選挙で返り咲きを果たし、中国が主導するプロジェクトの見直しに乗り出した。その筆頭が、マレーシアの東海岸を横断する東海岸鉄道の建設プロジェクトだ。マレーシア側が負担するコストが高すぎるとして、マハティール首相は就任早々に計画の中止を打ち出した。

 だが実際には計画は中止にはなっておらず、むしろ足元で交渉は活発化しているようだ。現地報道によると今年2月、政府高官は「コストが確定するまでは中止の決定はない」と発言し、マハティール首相も交渉継続の意向を示した。首都クアラルンプールが位置する西海岸に比べ、マレーシアの東海岸は経済の発展が遅れていた。東海岸鉄道はこれを挽回する好機と現地州政府から見られていただけに、容易には計画を中止できなかったとみられる。

 マハティール首相は就任当初、中国人投資家による不動産の「爆買い」を抑制し、投資の過熱で不動産価格が高騰するのを防ごうとも動いていた。標的になったのは、マレー半島南端に位置するジョホール州で開発が進む「フォレストシティー」だ。

中国の大手デベロッパーがマレーシアのジョホール州で開発を進める「フォレストシティー」。殺風景な原野にビルが乱立している