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 その業界には約50年の歴史を持つ老舗ブランドがある。しかも、エシカル(道徳的)で社会的な企業として高い評価を受けており、熱狂的なファンも数多い。他にも、世界的な知名度を誇るブランドがしのぎを削っている。競争の激しい業界だ。そんな市場に新たに参入し、顧客を獲得していくのは容易ではない。

 だが、創業わずか6年の新興ブランドがレッドオーシャンとも言える業界で、米国の若者を虜にしている。ユタ州ソルトレイクシティを本拠に置くCotopaxi(コトパクシ)だ。

ミレニアル世代から強い支持

 創業は2013年と新しく、店舗も2つしかない。それでも、「ミレニアルのためのアウトドアブランド」として存在感を高めつつある。スタートアップのデータベース、Crunchbaseによれば、2018年2月に2200万ドルの資金調達に成功した。当初の資本金が3万ドルだったことを考えれば隔世の感がある。規模の面では老舗ブランドに遠く及ばないが、今後の消費の核となるミレニアル世代(1980年以降に生まれた世代)の支持を背景に、投資家の期待を集めている。

 冒頭で「約50年の歴史を持つ」と述べたパタゴニア、さらにノースフェイス、L.L.ビーンといった著名ブランドが若者の獲得に苦戦する中で、コトパクシが若者の共感を得ているのはなぜか。その理由は商品に内在する物語と唯一無二の冒険、すなわち「ストーリーと体験」という現代のマーケティングの要諦をガッチリ押さえているからだ。

若者の共感を得ているコトパクシのホームページ

 まず、ストーリーから見ていこう。

 コトパクシの商品に通底している哲学は“Gear for Good”。アウトドア用品を作り、売ることを通して貧困に苦しむ人々を助けるという決意を示した言葉だ。パタゴニアが環境保護を前面に打ち出してアウトドア愛好家の心をつかんだように、コトパクシは貧しいコミュニティを支援するということを強く主張している。

 例えば、同社の看板商品に「Del Dia」というバックパックがある。このカラフルなバックパックはフィリピンの協力工場で一つひとつ手作りされている。布やジッパーなどの素材は大手アウトドアブランドの製造過程で出た端切れで、カラーパターンなどデザインの一部もフィリピン人の職人の裁量に任されている。一つとして同じものがないのはそのためだ。

コトパクシの看板商品「Del Dia」シリーズ