全1810文字

 大和ハウス工業は13日、中国の合弁会社である大連大和中盛房地産(遼寧省大連市)で、合弁相手から派遣された取締役2人と出納担当者1人に資金が不正流用された疑いがあると発表した。会社から外部への不審な送金が確認され、預金残高と帳簿の差異は現時点で14億1500万元(約234億円)に上るという。

 同社は3人を中国捜査当局に業務上横領などの疑いで刑事告訴する手続きに入った。取締役2人は合弁先の大連中盛集団有限公司の元董事長とその息子で、出納担当者は元董事長のめいだった。合弁企業の業務執行は合弁先からの派遣者にほぼ依存していたことから、発覚が遅れたようだ。

 いったい大連中盛集団とはどのような企業なのか。設立は1983年。高付加価値住宅やホテル、リゾートなどを開発して成長し、総資産は100億元(1650億円)を超えるという。合弁企業は2005年に設立されたが「最初から業績が好調だったため、信頼しきっていた」と大和ハウスの関係者は語る。同社内でも中国は成功事例とされており、ある時点までは信頼できるパートナーだったようだ。

大和中盛房地産が手掛けた大連市内のビル

 中国における合弁の実態に詳しい西村あさひ法律事務所 上海事務所代表の野村高志弁護士は「100%子会社であればコンプライアンスやガバナンスが効かせやすい。だが、合弁企業は歴史が長いところほど中国企業への遠慮や関係性の中で後回しにされる傾向がある。その分、不正が潜んでいるリスクが大きい」と指摘する。大和ハウスは、このリスクが最悪の形で顕在化した事例といえそうだ。

 同社は今後、第三者委員会を設置する。全容解明はその調査結果を待つ必要があるが、ここまで巨額の横領が見過ごされた経緯には、不審な点も多い。

 大和ハウスは「会計監査人による監査を通じて会社の運営状況を確認しておりました」と説明しているが、この点には疑問が残る。外部への送金は2015年から約5000万元(約8億2500万円)ずつ20回以上に分けて行われたという。入出金作業は出納担当者が一手に担っていたとのことだが、中国の会計監査では銀行口座と突合するため、このような原始的な手法が発覚しないとは考えにくい。少なくとも数年間にわたって会計監査が機能していなかった可能性がある。