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IBM、AT&T、マイクロソフトに続くか

 一つは競合買収の規制や、過去にさかのぼっての買収許可の取り消しだ。例えばアマゾンであれば、食品スーパーの「Whole Foods」や靴通販の「Zappos」の買収を、フェイスブックであればWhatsAppやInstagramの、グーグルであればカーナビアプリの「Waze」やスマート家電の「Nest」、広告のDoubleClickの買収許可を取り消すとする。

 もう一つはマーケットプレイスやプラットフォームを提供するテクノロジー企業を「プラットフォーム公共事業体(Platform Utilities)」と定義したうえで、そのプラットフォームにプレーヤーとして参加できなくするという立法措置だ。年間売上高が250億ドル以上でプラットフォームを提供する企業をこの規制の対象とする。

 アップルを規制対象としたのも、同社がスマートフォンやタブレット向けのアプリケーション販売サービス「AppStore」を運営しているためだ。AppStoreのようなマーケットプレイスを提供したいのであれば、その事業を切り離すことを求める。

 ウォーレン上院議員のプラットフォーム規制の方向は、クリントン政権の対マイクロソフト政策と同じだ。米司法省反トラスト局は1998年、米マイクロソフトを反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反で訴えた。同社のOS(基本ソフト)「Windows」にWebブラウザーの「Internet Explorer(IE)」をバンドルすることで、競合である米ネットスケープコミュニケーションズ(当時)などのブラウザーを消費者が選択する機会を奪ったとの主張だった。

 この訴訟では2000年に、マイクロソフトをOS部門とアプリケーション部門とに分割することを命ずる判決が地方裁判所で出ている。この判決は後に覆り、ブッシュ政権になってからマイクロソフトと司法省は和解した。それでも一連の訴訟はマイクロソフトの力を大きくそいだ。会社分割を恐れるマイクロソフトが、Windowsへのアプリケーションのバンドルを取りやめたり、IEのバージョンアップを長らくためらったりするようになったからだ。

 ウォーレン上院議員が目指すのは、これの再現だ。同議員はブログで「連邦政府が反トラスト法でマイクロソフトを訴えたことが、グーグルやフェイスブックなどが台頭する助けになったことは明白だ」「我々は誰もが(マイクロソフトの検索エンジンである)『Bing』の使用を強制されるのではなく、Googleが使えることをうれしく思っている」などと主張した。

 巨大なテクノロジー企業の力を連邦政府が反トラスト法でそぎ、企業の新陳代謝を促すことでテクノロジー業界全体がさらに強力になるという繰り返しは、米国産業政策の伝統ですらある。通信市場を支配したAT&Tは1980年代に実際に分割され、IBMは「互換機」のビジネスを認めざるを得なくなった。それが次世代のテクノロジー企業を生み出した。

 そうした前例があるだけに、ウォーレン上院議員の提案を評価する声がテクノロジー業界からもあがっている。Web分野の著名ソフトウエア「Ruby on Rails」の作者で「DHH」の通称で知られるデイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン氏は「Twitter」で、「ウォーレン上院議員の提案は、シリコンバレーがまさに求めているものだ」と主張した。

 現職のトランプ大統領も前回の大統領選中に「アマゾンは反トラスト法の制裁対象になる」と主張していた。アマゾンのCEO(最高経営責任者)で「ワシントン・ポスト」のオーナーであるジェフ・ベゾス氏に対する私怨の可能性があるが、トランプ大統領のアマゾン嫌いはまだ直っていない。GAFA分割は決して荒唐無稽な議論ではない。