「土地を貸していなかったことを考えるとぞっとするよ」

 一族の綿花畑を前に、ラス・ペティは安堵のため息をついた。冷たい風が吹き付ける大地。弾けた綿花で白く染まった畑を見上げれば、白亜の風力発電タービンが屹立している。

 テキサス州ダラスから西に4時間ほどクルマで走ったノーラン郡に、綿花畑や牧場など6000エーカーの土地を所有するペティ。彼の敷地では43基の風力タービンがブワーン、ブワーンという独特の音を響かせている。

 ペティ家が農場の敷地を風力発電事業者に貸し出したのは綿花栽培を補完するためだ。荒涼としたテキサス西部は雨が少なく、穀物の栽培には不向き。そのため、農家の大半は乾燥に強い綿花と酪農で生計を立てている。だが、頼みの綿花も干ばつで打撃を受けることが少なくない。

 敷地の下には原油が埋まっており、石油会社に土地を貸し出しているが、原油の出は悪化しつつある。その中で、別の収益源を確保するために、風力タービン建設という発電事業者の誘いに乗ったのだ。2006年の完成当時、世界最大の風力発電所だったホースホロー風力エネルギーセンターである。

 「収入はタービン1基につき年5000ドル。これがなければ2010~2011年の干ばつの時にかなりの牛を売ることになっていただろう」

ペティ家の綿花畑。6000エーカーの土地に43基の風力タービンが立っている(撮影:Retsu Motoyoshi)
「風力発電による収入は大きな助けになっている」と語るラス・ペティ氏(写真:Retsu Motoyoshi)

 「石油の州」というイメージの強いテキサス。事実、米国最大の油田地帯であるパーミアン盆地に足を運べば、シェール層から原油やガスをくみ上げるためのポンプがひしめき、メキシコ湾沿いには大規模な海上油田や石油精製施設が点在する。

 テキサス州を一つの国としてみた場合、同州の原油生産量はおよそ日量490万バレル(2018年12月、陸上)。この数字は米国内は言うに及ばず、ロシアとサウジアラビアに次ぐ世界3位の生産量である。

続きを読む 2/6 テキサスの風力発電容量は世界5位

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