つまり費用の点から、検査や診療を受けない患者も少なくない。米国では新型コロナウイルスの検査で30万円を請求されたケースが報道されている。「医療保険に加入できていない人が新型コロナ感染しても医療機関に行かず、治療を受けなかったり死亡したりする例が増加することが予想される」(西村医師)
新型コロナの流行拡大で医療格差が注目される可能性
他方、好調なテック企業の従業員や富裕層は、手厚い医療保険に入っていることが多い。上記のHDHPのような免責がなく、保険会社や病院グループのネットワークの医療機関にかかることができる。
新型コロナウイルスの流行拡大によって、こうした医療格差や収入格差が再び注目される可能性がある。
サンフランシスコでは数万人規模のイベントが次々とキャンセルになって、コンベンションセンターやホテル、観光、飲食などリアルなビジネスに大きな影響を与え始めている。これまでは米国の経済が好調だったことから、今年11月に行われる米大統領選でのトランプ大統領の再選は揺るぎないという見方が多かった。
ただ、新型コロナウイルスにかかった疑いがあるのに適切な医療を受けられない国民が続出すれば、不満が大きくなる可能性もある。
オバマ前大統領が医療保険の加入を義務づける「オバマケア」を導入したことで、約4000万人の無保険者は約2800万人にまで減った。そのオバマケアは、現在、民主党の大統領候補選びで勢いを増しているジョー・バイデン氏が副大統領として推進したものだ。

米国のスーパーでも、トイレットペーパーやマスク、消毒剤、パスタなどさまざまなものが店頭から消え始めている。人々の不安は徐々に高まってきている。
シリコンバレーを望むサンフランシスコ沖に停泊するグランド・プリンセス。そして全米各地への感染拡大。トランプ政権が対応を誤れば、医療や収入の格差問題に火が付いて、大統領選の風向きが変わりかねない。3月6日、当初カリフォルニア州のニューサム知事が行うとみられていた同船での感染状況の説明を、ペンス副大統領が記者会見を開いて行ったのは、こうした情勢を察してのことかもしれない。
西村俊彦医師のコメントを追加・修正しました。[2019/03/09 07:30]
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