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 3月4日、ついに米カリフォルニア州でも新型コロナウイルスによる死者が確認された。多数の感染者を出した大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号と同じ会社が運航する「グランド・プリンセス」号の2月の航海の際に乗っていた高齢者だという。

クルーズ船「グランド・プリンセス」号(写真:AP/アフロ)

 グランド・プリンセスは既に次の航海に出てハワイに向かっていたが、サンフランシスコ港に緊急帰港した。横浜港沖に停泊していたダイヤモンド・プリンセスと同様、グランド・プリンセスも沖合に停泊したままになっている。約60人が前回の航海にも乗っており、約20人の乗員・乗客が感染している。同船には乗客約2500人に加えて、1000人もの乗員が勤務している。

 ダイヤモンド・プリンセスと同じような状況だが、注視すべきは、2月にサンフランシスコで降りた乗客の動向だ。グランド・プリンセスは乗客数2500人規模の客船である。乗客の多くはシリコンバレーなどカリフォルニア州に居住しており、2月の航海に乗っていた人たちは既に散らばっている。

 こうした状況を考えると、カリフォルニアなど米国の西海岸でも、感染拡大のリスクが高まっている。カリフォルニア州知事とシリコンバレーのすぐ北のサンフランシスコ市長が緊急事態宣言を出した。サンフランシスコ市は2月25日に住民の感染者がゼロにもかかわらず同宣言を出したが、リスク情報を集めていたのだろう。

米国の致死率が高い理由

 ただ日米の数字を比較すると、疑問が生じてくる。

 米国での死者数は、シアトル地域を中心としたワシントン州の16人が最多で、サンフランシスコのケースなどを合わせると19人となる。死者数だけを見ると日本の6人の3倍超だ。

 一方、感染者数は日本の455人(3月8日正午時点)に対して、米国は164人(米国3月7日時点)。米国の方が致死率が高いように見えるが、シリコンバレーを拠点に感染症などの新薬や次世代医療を研究するスタンフォード大学の西村俊彦医師は「これまでは検査数が少なかった。シリコンバレーで言えば、サンフランシスコ市の非常事態宣言後に大手の医療機関が対策を強化。検査数が増え、より実態に即したデータになるのではないか」と指摘する。

米疾病対策センター(CDC)が発表している米国内の新型コロナウイルスの感染状況

 死者数などを考えると、少なくとも日本と同程度の感染者数でもおかしくない。世界保健機関(WHO)はパンデミックとは発表していない。ただ、西村医師は「パンデミックの定義は、『顕著な感染を引き起こし、死亡被害も顕著であること。さらに世界的な流行を示す』である。中国や韓国、イタリアや日本など世界中で流行している事実からパンデミックと言っていい状態だ」と指摘する。

 米国の感染状況は同国特有の医療事情も影響している。米国では約3億2800万人の国民うち、医療保険に入っていない人が1割以上いるとされる。実に3000万人超である。

 さらに医療保険に入っている人でも年間10万円や30万円など一定額までは免責となる「HDHP(High Deductible Health Plan)」の加入者も少なくない。自動車保険の車両保険の免責金額を想像すれば分かりやすいだろう。