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 インドネシア市場に軸足を置くゴジェックも負けていない。現地報道によれば足元でインドネシアの国営ガルーダ・インドネシア航空との提携交渉が進んでいるほか、今年はフィリピンのフィンテックベンチャーに資本投入し、シンガポールのEコマース企業とも提携。昨年はイオンモールインドネシアとも協業を開始した。

 グラブやゴジェックに異業種が群がる最大の理由は、両社がライドシェア・配車サービスで囲い込んできた大規模な顧客基盤とデータにある。シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピンなど8カ国で事業展開するグラブのアプリダウンロード数は1億回を超え、各国に700万人超のドライバーを抱える。東南アジア最大の人口を抱えるインドネシアで高いシェアを持つゴジェックのアプリも1億回以上ダウンロードされており、約100万人のドライバーが登録している。

 異業種からすれば、ライドシェア勢と提携してその顧客基盤にアクセスできれば、広く自社製品やサービスを普及させる道が拓ける。しかも両社は既にライドシェア・配車サービスだけでなく、レストランの出前や、買い物代行、荷物配送など、様々なサービスを展開している。ゴジェックにいたってはチケット販売からマッサージ師の派遣、洋服のクリーニングまで、手がけるサービスは20を超える。顧客の行動パターンから決済、食事の趣向まで、積み上がるデータは膨大だ。異業種がこれを分析したり、自社の顧客データと突き合わせたりできれば、マーケティングの精度を飛躍的に高めることができるだろう。

Eコマース勢に先駆けて成長

 グラブやゴジェックの立場で見れば、利用できるサービスが広がることで顧客も増え、これを目当てにドライバーが集まるという好循環が期待できる。提携先の拡大に伴い、グラブとゴジェックのアプリで利用できるサービスは増えていく。オフライン(現実のバイクや自動車の座席・荷台)とオンライン(アプリ)の別を問わず、自社のプラットフォームに様々な異業種のサービスが繋がっていくイメージだ。ライドシェア・配車サービスは基幹事業の一つに過ぎなくなり、「スマホを通じて多様なサービスを提供するプラットフォーマー」としての性格がより強くなるだろう。

 日本や米国、中国では楽天やアマゾン・ドット・コム、アリババ集団などEコマース勢がプラットフォーマーとして成長し、多様なサービスと顧客を取り込んできた。一方、東南アジアでは、Eコマースが拡大するのに不可欠な物流網と電子決済手段の整備が遅れていた。その穴を埋めたのがグラブとゴジェックだ。急速に普及したスマホと既存の車両を活用して交通・物流インフラを抑え、利用者とドライバーに決済手段を提供することで、Eコマース勢が存在感を発揮する前にプラットフォーマーとしての立場を築くのに成功しつつある。