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 英国にとっては、最悪のタイミングでの発表だった。

 ホンダは2月19日、2021年中に英南部スウィンドン工場での四輪車生産を終了すると発表した。英国のショックは計り知れない。クラーク民間企業・エネルギー・産業戦略相は「衝撃的な決定だ」との声明を出した。英メディアは連日、トップニュースで報じている。

 スウィンドン工場に約3500人の従業員がおり、サプライヤーを含めると約7000人に影響が及ぶ可能性もあり、地元経済に動揺が広がっている。

 現在、迷走する英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)交渉が大詰めを迎えている。3月29日の離脱日が迫る中、合意条件なしに離脱することが現実味を帯びており、このタイミングでの英国生産の撤退は、世論や交渉に大きな影響を与えかねない。ホンダ社員からも「タイミングが悪すぎて禍根を残す」とのため息が漏れる。

英南部にあるホンダのスウィンドン工場。3500人ほどの従業員が働き、地域経済を支えている(写真:ロイター/アフロ)

 19日の記者会見でホンダの八郷隆弘社長は「欧州域内での生産は競争力などの観点で難しい」と述べた。同社は英国工場の稼働率を高めるために、同工場で生産した四輪車の55%を米国に輸出している。仮に英国がEUの関税同盟にとどまったとしても米国への輸出に高い関税をかけられる恐れがあり、八方ふさがりの状況だった(参考:離脱可決でも多難、英自動車産業)。

 また、八郷社長はブレグジットとは関係がなく、グローバルでの生産体制見直しの一環としての経営判断だったことを強調した。しかし、英国ではこのタイミングでの発表に、額面通りに受け止める雰囲気にはない。ほとんどがブレグジットと関連づけて報じている。

 「ブレグジットとは関係がない」という発言は、英政府への配慮なのかもしれないが、このタイミングで本当にブレグジットを考慮していないとなれば、逆に投資家などからガバナンスに対する不安が高まりかねない。

 いずれにせよ、明確に言えるのは、英国生産からの撤退は販売不振が原因の1つであることだ。欧州自動車工業会によると、ホンダの2018年のEU域内での販売台数は前年比3%減の13万557台と伸び悩み、市場シェアは0.9%と1%を割っている。販売不振には、2つの誤算があった。