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 米国でのシェアが7割を超えるグーグルマップ。地図の分野では、カーナビのWaze(ウェイズ)やアップルのマップを凌駕している。そんな巨人がいる市場で、新たに参入しようと思う企業はほとんどないと思われるかもしれない。

 だが、例外的にスタートアップが参入している地図がある。自律走行型車両向けの地図だ。

頻繁な更新が必要なためグーグルでも手に余る

 ゴールドマン・サックスによれば、先進運転支援システム(ADAS)を搭載した自動車や自動運転車の市場は2015年の30億ドルから2030年には1970億ドルと急激な拡大が見込まれている。市場の拡大を見越して自律走行型車両を開発する企業も増加しており、サンフランシスコのベイエリアでは公道実験を申請している企業を含め、200社以上が開発に乗り出している。

 自律走行型車両が安全に道路を走るには、現在の平面的な地図ではなく、道路標識や路面標示、縁石や街路樹など様々な周辺情報を網羅した高精細の3D(3次元)地図が必要となる。

 これまでのところ、グーグルマップのようなモバイル向け地図アプリとは異なり、自動車向けの高精細な3D地図で確たる勝者はいない。

 現在はグーグル傘下のウェイモやGM傘下のGMクルーズ、テスラなど、自律走行型車両の開発を進める企業が地図を内製しているが、カメラやセンサー、GPSを搭載した地図作成車両は高価な上に、季節によって景観が変化するため自動車向け地図は頻繁な更新が必要だ。米国だけでも250万マイル(400万km)の舗装道路があることを考えると、さしものグーグルでも手に余る。

 今はやむを得ず内製しているが、本業は自律走行システムの開発であり、地図を作ることではない。自動車向け地図の専業が育てば、外部の地図会社から地図を買うようになるだろう。この未来の巨大市場を狙って、世界中のスタートアップがしのぎを削っている。

一般のドライバーから必要な情報を収集

 それぞれの企業のアプローチは異なる。例えば、2016年に創業したサンフランシスコのマッパーは、自社で内製した地図作成装置と、ライドシェアサービスのようなマッチングを活用し、地図作成のコスト削減とオンデマンドでの提供に注力している。

 マッパーの仕組みはこうだ。まず、ウーバーやリフトと同様に、ライドシェアのドライバーや一般のドライバーを集め、地図作成を依頼する。その際に、3D地図を作るための装置を渡し、専用アプリを通して走るルートを指示していく。その後、指定のルートを走り終わったドライバーは、Wi-Fiが使える環境下で走りながら収集したデータをアップロード。そのデータをマッパーが高解像度の自動車用地図に変換していく。依頼を受けた後、顧客の元に24時間以内に納品するのが同社のウリだ。

 アウディやBMW、ダイムラーが出資するオランダのHERE Technologiesや同じくオランダを本拠にするTomTom、ゼンリンなどの競合他社は高価なGPSや慣性計測装置、カメラ、3Dセンサーを搭載した車両を走らせて地図を作成している。

 ただし、そのやり方ではコストが膨れ上がるため、マッパーではデータ収集の装置を内製してコストを低減している。市販のカメラやセンサーを活用した独自のものを作った。一つひとつの性能は高価な装置を使う競合より低いが、同じく内製したソフトウェアを組み合わせることで高精度の3D地図を作ることに成功した。

マッパーの開発したデータ収集装置(写真:Tex Allen)
実際に路上を撮影している様子(写真:Tex Allen)

 「高価なユニットは5000ドルほどするが、マッパーでは500ドル。磁石がついているので、クルマの天井に簡単に取り付けることができる」。ニキール・ナイカルCEO(最高経営責任者)は胸を張る。