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 日産自動車がゴーン前会長の意思決定を覆した。

 舞台は日産にとって欧州最大の生産規模を持つ英サンダーランド工場だ。約7000人の従業員が年間約50万台生産し、うち8割を欧州諸国などに輸出している。

 日産は2月3日、欧州向けの次期スポーツ多目的車(SUV)「エクストレイル」を日本で生産すると発表した。同社は「将来の英国とEUのあり方に見通しが立たない今の状況は、将来の事業計画を策定するにあたっての一助にはなりません」との声明を出し、生産計画の変更の原因が、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)であることを示唆した。英国が合意条件なくEUから離脱した場合は、部品の輸入に関税がかかり、通関手続きも必要でコスト上昇が不可避である。

 日産を20年近く率いたゴーン前会長は16年10月にメイ英首相と会い、EU離脱が英国での生産に影響が及ばないような配慮を求めた。英政府からEU離脱後にもサンダーランド工場の競争力を維持することを取り付け、同工場でエクストレイルの次期モデルの生産を継続することを発表した経緯がある。だが、ゴーン氏が解任された今、日産の中でサンダーランド工場の位置づけが見直される懸念が高まっている。同工場は英国で最大の生産規模を誇る工場であるため、英国メディアも今回の決定を大きく報じている。

 「日産ゴーン氏解任とEU離脱に揺れる英最大工場」の記事でも取り上げているが、サンダーランド工場の従業員や周辺住民はブレグジットの動向に気を揉んでいる。サンダーランド工場でリストラが断行される可能性があるからだ。

英国北東部にある日産自動車のサンダーランド工場。次期エクストレイルを生産する予定だったが、日本での生産に変更された

 だが、こうした動きはブレグジットが主因なのだろうか。実はEU域内の2018年の新車登録台数(欧州自動車工業会の発表)で、最も減少台数と下落率が大きかったのが日産自動車だ。

 47万3810台と前年に比べ14.3%も減少し、前年まで上回っていた現代自動車や起亜自動車の韓国勢にも抜かれてしまった。リストラに踏み切った場合は、ブレグジットというより、従来からの販売不振が原因だと考えられる。