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 また米国は緊急事態宣言を出すのも早かった。ドナルド・トランプ大統領は2020年1月29日、感染拡大を防ぐための専門組織を立ち上げ、アレックス・アザー厚生長官を指揮官に指名した。同長官は31日に公衆衛生に関する緊急事態を宣言。過去14日以内に中国に滞在していた外国人の入国禁止を決め、中国から帰国する米国人については対象を湖北省の滞在者に限定し、帰国後14日間は隔離状態に置くとした。さらにこの米国人の受け入れをニューヨークのケネディ国際空港など7カ所(後に4カ所が追加された)に制限もした。これらの措置は2月2日午後5時から発動されている。

 日本政府も2月1日から過去14日間に湖北省滞在歴のある外国人や湖北省発行の中国旅券所持者の入国を禁止しているが、米国に比べると対象とする範囲が狭い。こうした対応の違いを見ると、やはり日本はパンデミックに不慣れなことが分かる。

米商務長官の「米経済に追い風」説に物議

 CNNなどの報道によると、2機目のチャーター機の運航は早くて2月3日(米国時間)に予定されていたが、延期された。迅速で厳重な手続きを経ていて、かつその事実が適切に報道されるのであれば、国民の混乱も起きにくいと予想できる。

 米国でも新型コロナウイルス関連の報道は多いが、帰国者や武漢に取り残された米国人の話に焦点を当てるというより(あったとしても中国人の妻や子と離ればなれになった米国人の話などが多い)、今回の感染拡大が米国や世界の経済にどんな影響を与えるかといった俯瞰(ふかん)の視点を中心に取り上げられている。

 そうした報道において物議を醸しているのが、ウィルバー・ロス米商務省長官が1月30日、米テレビ局フォックスのインタビューに答え、「(新型コロナウイルスの発生が)中国から米国に雇用が戻ってくるのにつながる」と発言したことだ。

 ロス長官は「全ての米国人から新型コロナウイルスの被害に遭った人たちに心からお悔やみを申し上げたい。だからこんな話はしたくないが」と前置きをしながらも、「中国でビジネスを展開する企業はこれから、こうしたリスクも鑑みてからサプライチェーンを構築する必要が出てくる」と指摘した。その変更先に「米国やメキシコ」の名を挙げた。

 実際、米アップルや米フォード・モーターは中国の工場の稼働を一時的に止め、サプライチェーンのリルート(切り替え)に着手している。ただ、米ニューヨーク・タイムズなどは「工場の移転やサプライチェーンの変更はコストが高く、そう簡単に実施できるものではない」と指摘。またサプライチェーンの転換先はベトナムやインドになるだろうと予測し、ロス長官の発言に疑問を投げかけている。