全2556文字

 新型コロナウイルス感染の拡大が世界に広がり、米国でも連日のように大きく報道されている。日本では政府が用意したチャーター機で中国・武漢から帰国したばかりの人をメディアがマスク1枚で取り囲み、記者会見を開いたことが非難の対象になっている。感染者や渡航者などへの警戒が広がっているのだろう。記者の元にも日本にいる家族から「世界で中国人だけでなくアジア人への差別が悪化しているようだが大丈夫か」と心配するメールが届いた。

 今のところ、ニューヨークでは「アジア人=コロナウイルス感染者の可能性が高い」といった警戒心や差別のようなものは感じない。中国との距離が遠いこともあるかもしれないが、この反応の違いには米政府による厳重な対応と、米メディアの報道の仕方が影響しているように思う。

 まず米政府によるチャーター便の運用が日本とは全く異なる。下の写真は2020年1月29日、政府が手配した航空機がカリフォルニア州南部にある軍基地に着陸した直後の様子だ。出迎えている全員が生物テロへの対応時に使うような防護服に身を包んでいる。到着後に搭乗者たちを検疫する医療チームのメンバーだろう。

2020年1月29日、米国人195人を乗せた米政府チャーター機がカリフォルニア州南部の米軍基地に着陸した。防護服に身を包んだ医療チームが搭乗者たちを出迎えた(写真:AP/アフロ)

 チャーター機で帰国したのは主に米国領事館で働く米国人195人。出発前の中国で2度、給油したアラスカで2度の検疫を受け、さらに到着後に基地内で3日間の経過観察と検疫を受ける手はずになっていた。米テレビ局ABCによれば「全員が自発的(voluntary)に検疫を受けることに同意した」という。当初、帰国者たちは3日間で症状が出ないなど問題ないと判断されれば自宅に戻ることができるはずだったが、後に14日間は基地内にとどまらなければならないとする「隔離命令」が出た。こうした措置は1960年代の天然痘の流行時以来だという。

記者は帰国者に近づけもしなかった

 日本では到着したばかりの人たちを報道陣が囲んだことが問題になったが、米国の記者は基地に入ることも許されていなかったことが各種報道から見て取れた。冒頭の写真もそうだが、いずれも遠くから望遠カメラで捉えた画像や映像のみだったからだ。

同日に放送されたABC「ワールド・ニュース・トゥナイト」の画像(動画はこちら

 ABCテレビでは、帰国者たちが幾度もの検疫を受けていることを画面に大きな文字を入れて解説、検疫後に上述の過程を経て初めて基地外に出られることもアナウンサーが口頭で説明していた。

同上の番組より。アナウンサーの解説に合わせて検疫の回数を文字で強調した