業界の未来を正しく予想できても、その未来を実現できるとは限らない。米フォード・モーターはMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の未来像を早期に予想し、準備も進めていた。しかしゴールにたどり着く前に、息切れを起こしている。

 自動車会社はものづくりの会社から、交通サービスの会社へと変わらなければならない――。フォードのマーク・フィールズ前CEO(最高経営責任者)は、大手自動車メーカーのCEOの中でもいち早く、MaaSの会社に自ら変革すると訴えていた人物だった。

 フィールズ氏は2016年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2016」で、「自動運転車は大きなビジネスチャンスだ。2兆3000億ドルの自動車市場ではなく、5兆4000億ドルの交通サービス市場で勝負する機会を得られる」と力説。自動運転車が実現したら、フォードはそれを使ったMaaSの会社になるのだと宣言していた。

 しかしそれから3年が経ち、フォードの変革は明らかに息切れを起こしている。フォードが2016年に買収したMaaSスタートアップの米チャリオットは2019年1月10日、同社が提供する「オンデマンド」のバスサービスの事業を終了すると発表した。

チャリオットのバス(出所:米フォード・モーター)
チャリオットのバス(出所:米フォード・モーター)

 チャリオットが提供していたのは、利用者の求めに応じ、オンデマンドで路線が決まるバスのサービスだった。利用者が専用スマホアプリで自宅の場所と勤務先の場所を登録すると、様々な利用者にとって最適なバス路線がオンデマンドで設定される。これがチャリオットのうたい文句だった。

 しかし実際には、オンデマンドなバス路線の設定を行政当局が認めないケースもあった。同社の本拠地であるサンフランシスコ市がまさにそうで、既に市営バスが走っているルートでの営業を認めなかった。

 公共バスの代わりにチャリオットが力を入れたのは、企業の従業員送迎バスだった。米アップルや米グーグル、米フェイスブックなどは、サンフランシスコに住む従業員をシリコンバレーのオフィスまで送迎するバスを走らせている。これらの有力企業のように大型送迎バスをチャーターする資金は無いが、それでも送迎バスを用意したいスタートアップを中心にサービスを展開していた。

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