全1790文字

見逃せないブレグジットの感情論

 だが、合意なき離脱の可能性は高まっていると見るべきではないだろうか。理由はその議論のスタートが感情論によるところが大きいからだ。

 18年11月に英国最大の自動車工場がある英北西部のサンダーランドで住民の話を聞いた際にも実感した。合意なき離脱となれば、日産自動車の生産計画に大きな影響が出そうだが、離脱に賛成している人が少なくなかった。

 一度議論が始まれば、離脱派と残留派のそれぞれが自らに都合のいい理屈に基づいた主張を展開する。例えば、離脱をすればEUの規制から離れて、EU外の国々と自由に貿易協定を結び、貿易や経済が活性化するという理屈だ。

英首相官邸の近くで、EU離脱を主張する人たち

 だが、議論の根っこには、双方がなかなか歩み寄れない感情が横わたっている。議会での議論でも、離脱派にはEUの官僚主義への反発や移民の流入に対する不安など、感情的な要素が強いように見える。それに対する残留派の反論もまた、感情的になりがちで、全く議論が噛み合わない。ある英国人は、「実際に合意なき離脱になって見ないとその影響の大きさを理解しないのではないか」とあきらめ顔だ。

 EU側が最終的には妥協するのではないか、という見方もある。だが、これについても過去のデータ規制や環境規制における議論を見る限り、経済合理性だけで判断されることは期待できない。

 離脱予定日の3月末まで、残すところごくわずかだ。今から対策をとってもできることは限られているかもしれないが、企業は情報収集と合意なき離脱が事業に与えるインパクトを、本気でシミュレーションしておいた方がいい。