全1790文字

 メイ英首相は1月21日、欧州連合(EU)離脱=ブレグジットの代替案について英議会で議論した。15日に英議会でEUと合意した離脱協定案が大差で否決され、週末を挟んで代替案を検討してきた。詳細は明らかになっていないが、2度目の国民投票の可能性を否定するなど従来の離脱案を踏襲する案になりそうで、メイ首相のEU離脱案は総スカンの状況が続いている。

英国のEU離脱は解決策が全く見えていない。メイ首相は、議会で総スカンを食らっているが、政権交代を恐れる保守党の支持で、不信任案は否決された(写真:ロイター/アフロ)

 こうした状況下で、着実に合意なき離脱の可能性は高まっている。英調査会社ユーガブが離脱協定案が否決された場合のその後の展開を聞いた世論調査 (調査は1月13~14日の実施)では、回答者の35%が合意なき離脱の可能性があると回答していた。この数字がどうなったかは次の調査結果の公表を待つ必要があるが、企業関係者を取材すると、意外にも楽観論が今も根強い。

 ロンドンで日本企業の人たちと話すと、「最後には何とかなるだろう」と考えている人は少なくない。一部では4月以降の物流や税関手続きなどでの混乱に備える動きもあるが、「合理的に考えれば合意なき離脱などありえない」と考える人たちは少なくない。

 少し古くなるが、日本貿易振興機構(ジェトロ)が2018年9月27日~10月25日に実施した日本企業に対する調査では、有効回答があった英国に拠点を構える175社のうちブレグジットの対応策について「策定予定なし」と「未定」と答えた企業は73%に上った。さすがにその状況は変わっているだろうが、必ずしも備えは万全というわけではないだろう。

 なぜ、合意なき離脱の可能性が低いと考えている。それは、合理的に考えれば、合意なき離脱は、英国とEUの双方にとって、得にもならないことが多いからだ。

 英国は3月29日に合意なき離脱となると、国境で通関手続きが発生したり、EUからの生鮮食品の供給が減少したり、経済社会に大きなショックが生じる可能性がある。イングランド銀行(英中央銀行)は、リーマンショックを超える経済的なショックが来るとの報告書を発表している。

 逆にEUからもデメリットが大きい。例えば、ドイツは英国に多くの自動車や機械、医薬品などを輸出している。対英貿易は大幅な黒字であるため、対英貿易で関税、通関手続きなどが発生することは、ドイツ産業のリスクとなっている。

 ドイツ、フランス、オランダなどは金融関係の拠点が集まり、漁夫の利を得るのではないか、との見方があったが、実際には当初言われたほどにはロンドンからEUに金融機関の拠点は移っていない。

 「最終的には英国とEUが歩み寄って妥協点を見出すだろう」と考えるのは、得するより損することの方が多そうだと見るからだ。つまり経済合理性から判断すれば、合意なき離脱はないというわけだ。