実際にアマゾンは、自社で開発したAlexa搭載電子レンジ「Amazon Basics Microwave」を、59.99ドルで販売する。他社の同出力(700ワット)の電子レンジと比較しても、その価格はほぼ同じか、むしろAlexa搭載電子レンジの方が安いほどだ。アマゾンとしてはAIを搭載したからといって、その製品にプレミアムを付けて売るつもりは全くない。

アマゾンが見せた「留守宅商法」

 AIが付加価値にならないのであれば、家電メーカーはAI家電でどう稼げばいいのか。その回答をCES 2019会場で示したのも、やはりアマゾンだった。同社がアピールしたのはAI家電を使った「留守宅商法」で、それはこんなシナリオだった。

CES 2019でのアマゾンブース
CES 2019でのアマゾンブース

 消費者はまず、ネットワーク経由でドアの施錠や解錠ができる「スマートロック」と、アマゾンが販売するAIカメラ「Amazon Cloud Cam」を自宅に装備する。スマートロックはアマゾン製のものであっても、アマゾンと提携する他社の製品であっても構わない。

 そうすると消費者の留守宅では、アマゾンの配達員がドアを解錠して玄関先に荷物を置いていったり、アマゾンと提携するホームクリーニング事業者が入って掃除したりできるようになる。留守宅はAIカメラが監視しているので、配達員や作業員は悪さができない仕組みだ。

 アマゾンが留守宅商法「Amazon Key」を最初に発表したのは2017年10月のこと。今回のCESでは玄関のドアだけでなくガレージもこの仕組みに対応。留守宅内に配達員を立ち入らせることに抵抗がある場合は、ガレージに荷物を置けるようにした。さらにアマゾンは自動車のトランクをネットワーク経由で開けて、荷物を配達するサービスも発表している。

 様々な家電メーカーが「スマートホーム」を提案しているが、家や家電が賢くなるだけでは消費者のメリットにはならない。これまでできなかった「何か」が実現できて初めて意味を持つ。それに対してアマゾンは、自社サービスにスマートホームを組み込むことで、ユーザーにとってのメリットを分かりやすく提示している。

 AI家電は単独ではビジネスにならず、それを活用したサービスで稼ぐ必要がある。そのことはパナソニックに限らず、世界中の家電メーカーが理解しているだろう。しかしそのサービスのあり方を鮮やかに示していたのは、家電業界にとっては“異業種参入組”であるアマゾンだった。

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