「空飛ぶクルマ」と呼ばれるような電動の垂直離着陸(eVTOL)機の分野で、自動車メーカーとヘリコプターメーカーによる主導権争いが激しさを増している。2020年1月7~10日(現地時間)に米ラスベガスで開催された「CES 2020」では、韓国・現代自動車と、ヘリコプター大手の米Bell Textron(以下、ベル)がそれぞれ新型のeVTOL機を披露した。

ベルのeVTOL機「Bell Nexus 4EX」
ベルのeVTOL機「Bell Nexus 4EX」
現代自動車のeVTOL機「S-A1」
現代自動車のeVTOL機「S-A1」

 15日(現地時間)には、トヨタ自動車がeVTOL機を開発する米国の新興企業ジョビー・アビエーション(Joby Aviation)との協業を発表。eVTOL機の量産に向けた技術支援に加えて、ジョビーに出資することを明らかにした。同社が計5億9000万ドル(約648億円)を調達した「シリーズC」の出資ラウンドのリードインベスターとして、トヨタは3億9400万ドル(約433億円)を投じる。これに伴い、トヨタ副社長の友山茂樹氏がジョビーの取締役に就任。ジョビーはこれまでの出資と合わせて、総額で7億2000万ドルを調達したという。eVTOL機を手掛ける新興企業の中で、最高水準の調達額だ。

 eVTOL機は従来のヘリコプターに比べて、燃費の改善によりランニングコストを大幅に削減できる。さらに駆動部が静かなこと、複数ローターの利用などで安全性の向上につながることから、空のモビリティーに「破壊的イノベーション」を起こす可能性を秘めるとして、モビリティー業界や航空業界などから注目を集めている。中でも期待されるのが、「空のライドシェア」や「エアタクシー」とも呼ばれる「UAM(Urban Air Mobility:都市型航空交通システム)」だ。

 ヘリコプターメーカーにとってeVTOL機は、既存の市場を奪う強力なライバルになり得る。こうした状況で、eVTOL機に対抗するのではなく、積極的に取り込もうと開発に乗り出しているのがベルだ。同社は軍事用から民間用まで、幅広いヘリコプターを手掛ける実績を生かしてeVTOL機を開発中だ。

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