ドナルド・トランプ米大統領の経済政策を「経済学」の視点から評価する。貿易赤字の削減を重視するトランプ氏は、その一方で減税を進める。減税に伴う財政収支の悪化は、貿易収支の悪化を導くのが経済理論の語るところ。トランプ氏の政策にはこんな矛盾がいくつもある。経済学の泰斗、野口悠紀雄・一橋大学名誉教授が、ビジネスパーソンが知っておくべき経済理論を解説しつつ、トランプ政策を斬る。
(写真:ロイター/アフロ)野口悠紀雄が斬る、支離滅裂のトランプ経済学

完結
10回
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#0
支離滅裂のトランプ経済学#00/米国第一の逆を行く
トランプ米大統領が進める経済政策を「経済学」の視点から評価する。減税に伴う財政収支の悪化は、貿易収支の悪化を導くのが経済理論の導くところ。トランプ氏の政策にはこんな矛盾がいくつもある。
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#1
支離滅裂のトランプ経済学#01/アメリカの経常赤字は“負け”か
トランプ米大統領が進める政策を「経済学」の視点から評価する。今回は「貿易赤字」を取り上げる。トランプ氏は貿易赤字を“負け”と考えているようだが、経済学ではそうは考えない。むしろ、米国民にとっ…
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#2
支離滅裂のトランプ経済学#02/経常赤字を賄えるのは「米国の勝ち」
トランプ米大統領が進める政策を「経済学」の視点から評価する。「経常収支の赤字」は「資本収支の黒字」と等しくなる。つまり、経常赤字と同額の資金が米国に投資という形で流入している。これは、米国経…
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#3
支離滅裂のトランプ経済学#03/「FRBの利上げ」を非難できるのか?
今回は、金利に関するトランプ大統領の発言を「経済学」の立場から評価する。同氏が唱えるインフラ投資拡大は金利を上げる。それにもかかわらず米連邦準備理事会(FRB)の利上げを非難するのは自己矛盾…
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#4
米金利上昇、長短逆転は不況の兆候/支離滅裂のトランプ経済学#04
今回は、米国の金利が現実にどう推移しているかを見る。金利は2016年の末頃から上昇基調にある。これは、トランプ大統領が唱える景気拡大策が金利を上げると予想されたから。金利には将来起こる事態を…
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#5
ドル高で貿易赤字はさらに拡大する/支離滅裂のトランプ経済学#05
今回は、為替レートと貿易赤字の関係を考える。為替レートを決める最大の要因は各国間の金利差と考えられている。米国の金利が日本より高ければ、投資家は米国で資金を運用すべく、円を売りドルを買う。こ…
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#6
貿易は「無から有を作り出す」/支離滅裂のトランプ経済学#06
今回と次回は「絶対優位」と「比較優位」を取り上げる。貿易が利益を生み出す仕組みを説明する理論だ。その結論は、「それぞれの国が特化して生産したものを交換することで、輸出国も輸入国もどちらも得を…
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#7
タイプが得意でもタイピストを雇う理由/トランプ経済学#07
今回は「比較優位」を取り上げる。貿易が利益を生み出す仕組みを説明する理論だ。弁護士は、たとえタイプが得意であってもタイピストを雇うほうが利益が大きい。同じことが貿易の世界でも言える。
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#8
米中貿易戦争の勝者はどっち/支離滅裂のトランプ経済学#08
今回は米中貿易戦争を取り上げる。結論を先に言えば、貿易戦争に勝者はいない。ただし、その被害のインパクトは貿易依存で測ることができる。加えて、関税が上乗せされる製品の価格弾力性が重要な意味を持…
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#9
中国の低賃金が背中押した水平分業/支離滅裂のトランプ経済学#09
米国の産業構造がどのように変わってきているかを取り上げる。製造方式には「垂直統合」と「水平分業」がある。20世紀の製造業は垂直統合を進め、生産を大規模化し効率を高めた。ところが90年代に入り…
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#10
米国のすごさは新産業を生み出す力/トランプ経済学#10
米国の経済を支えているのは、GAFAをはじめとする新しい産業だ。世界をこの点を評価し、米国に資金を供給している。トランプ政権が進める移民排除政策は、この強みを自ら弱めるものだ。
講師

野口 悠紀雄
のぐち・ゆきお
一橋大学名誉教授
1940年生まれ。63年に東京大学工学部を卒業、64年に大蔵省(現・財務省)入省。72年にはエール大学でPh.D.(経済博士号)を取得。専攻はファイナンス理論、日本経済論。一橋大学教授、東京大学教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科なでで教授を歴任。スタンフォード大学でも客員教授として教壇に立った。著書に「日本経済入門」(講談社現代新書)、「入門ビットコインとブロックチェーン」(PHPビジネス新書)など多数。
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