裁判が有効手段とは限らない

 ではそうすれば良いのか。実力行使に出るしかない。模倣企業が運営する工場を丸ごと買収してしまうのだ。特に中国の模倣品を製造する工場は年々品質を高めている。黒田法律事務所の黒田健二代表弁護士は「模倣品が流通することによる正規品販売の利益減少を防ぐにはメリットがある。だが品質の高い模倣品工場が増えると買収コストとの見合いで効果が薄くなる可能性がある」とみる。

 リスクは高いものの、司法に訴えても意味がない国においては有効策といえるだろう。アフリカを中心に海外の法務事情に詳しい赤坂国際法律会計事務所の角田進二弁護士は「日本では紛争が起きると裁判で解決しようと考える経営者が多い。途上国のなかには外国企業に不利な判断をする裁判所も少なくない。どう解決するかは考えておくべき」という。

 海外進出のリスクはまだある。日本の商習慣として、取引が安定してくると手形や小切手による決済も行われる。だが日本の手形は決済できず不渡りとなってしまうと、2回目で銀行との取引が停止してしまう。企業経営がたちいかなくなるため、信頼度が高い。だが中国は違う。中国人民銀行に額面金額の5%(但し、最低1,000元)、債権者に2%分さえ支払えば再度小切手を振り出すことが可能となっている。中国の決済に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティング国際ビジネスコンサルティング部の数井康治チーフコンサルタントは「油断しているとただの紙切れになるケースもざらにある。取引先の与信管理は日本以上に慎重にやるべき」だと指摘する。

 企業経営を揺らぐ危険すらある。東証1部上場だった化学薬品商社「江守グループホールディングス」が2015年4月に民事再生法を申請した。中国の取引先からの代金未回収をはじめ、中国事業の失敗が引き金となった。100年以上続いた企業が幕を下ろした。企業の成長には国際進出が不可欠となるが、与信管理といった慎重さも求められている。