匿名で書き込まれるネットの悪意ある書き込み。書き込んだ人物のを特定しようと「インターネット上の住所」に相当するIPアドレスを入手しても、インターネット接続事業者(ISP)がIPアドレスの利用者情報を公開しなければ誰が書き込んだかは分からない。個人が分からなければ、訴えたくても訴えられない。

 しかし「個人が特定できないなら、IPアドレスの開示に意味はない」と思うのは間違いだ。問題発言を会社のPCから書き込んでいた場合、会社名までは判明する場合がある。発言の内容によっては、会社が世間から糾弾されかねない。

 ネットサービスによっては利用者のIPアドレスを最初から公開していることがある。社員の過激な投稿は会社の危険を招くのだ。たとえ匿名にしていても何かのきっかけで勤め先が判明し、「あの会社の社員がこんなことを言っていた」と大騒ぎになるケースがある。

IPアドレスからアクセス元を検索するサービスで企業名がバレる

 例えば2009年、朝日新聞の社員が匿名掲示板2ちゃんねる(現5ちゃんねる)に差別表現を書き込んでいることが発覚し、問題になった。IPアドレスから、朝日新聞社内からの書き込みだと判明したのだ。

 ほかにも電通デジタル・ホールディングスやスクウェア・エニックスの社員が、社内からゲームの感想を書き込むなどしていることがやはりIPアドレスから発覚し、消費者のフリをした宣伝活動ではないかと話題になったこともある。

事実がバレた時は不祥事と同等

 「ネットの風評被害のうち、デタラメな話題は対策しやすい。問題は事実がバレて炎上するケースだ」。セキュリティ会社ラックでフェローを務める杉浦隆幸氏はこう話す。

 事実無根の書き込みで炎上した場合は、すぐに「すぐに調査する」「事実ではなかった」といった公式発表をすることで世論を上書きできる。しかし事実が漏えいして炎上した場合、それが法律に反していなくても「社員の統制が取れていない」などの反感が残る。「漏えいした内容によっては不祥事が発覚したのと同じ対応に迫られる。企業イメージの低下は避けられない」(杉浦氏)。

 匿名の投稿は、何気ない投稿から個人が特定されて勤務先が風評被害を受ける可能性がある。しかし匿名投稿した個人が特定されるより怖いのは、投稿サービス(SNS)がのっとられてしまうことだ。

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