インターネットを舞台にした炎上は近年増え続けている。リスク検知サービスを手がけるエルテスによると、ネット炎上件数は増え続け、企業は対策に頭を悩ませている。

SNSの炎上件数は増加している
●SNSの炎上件数の推移
出典:エルテス資料

 では、そうしたネット上の悪評や炎上に対抗するには、どうすればいいのか。その答えは、悪意あるコメントを書き込んだ犯人を捜すことでも、問題コメントを消すことでもない。新しい情報を直ちに発信して、世論を”上書き”することだ。犯人を捜すことは膨大な手間がかかることは、前の記事で説明した通り。悪評を消そうとした場合、そのやり取りがネットに投稿されて、さらに炎上する可能性もある。そのため、エルテスの菅原貴弘社長は「問題を認識しているというイメージ付けが重要。まずは『世間をお騒がせして、すみません。ただいま調査中です』と一報を出すと、それだけで対応が早いという印象に変わり、効果的」と指摘する。

 炎上に関するものだけでなく、企業に関するさまざまな情報を積極的に発信し、世の中のイメージや検索ランキングの上位に出てくる内容を塗り替えることもできる。城山タワー法律事務所の蒲俊郎弁護士は「個人は自ら情報発信をして検索順位を下げることは難しいが、企業は自らさまざまな情報発信ができる強みを生かすのも1つの方法」と話す。

 早い段階で、炎上の元になった投稿がデマだと分かっている場合は、「自社のホームページでデマですよと、自社の見解とともに発表して、火消しをするのも効果的」(法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士)だ。憶測や噂でネットの世界が盛り上がる前に、企業側から確定情報を出したり、「明日の何時までに調査結果を発表する」などのアナウンスをしたりすることでも、炎上を防ぐことができる。

 最近の有名な事例ではローソンHMVエンタテイメントが提供する「ローソンチケット」を巡る一連の対応が、評価されることが多い。9月2日に問題の投稿がされた後、9月4日に事実調査の結果を正式発表、9月6日には投稿者との間で問題が解決したことを公表した。蒲弁護士は「非常にスピーディーな上、コメント内容は『事実だけを誠実に』発表している。投稿者への警告や批判なども行っておらず、適切な対応だった」と評価する。

 ほかに迅速な対応だった事例としては、15年に某IT企業の従業員を名乗る人物がツイッターで誹謗中傷を繰り返していたことへの対応があげられる。某IT企業が同日中に、ツイッターの公式アカウントで、「調査したところ、弊社の従業員ではない」と発信したことで、風評被害を未然に防いだ。セキュリティー企業ラックのフェローを務める杉浦隆幸氏は「本当にうまく対応すると、顧客の勘違いやデマによる風評被害は話題になる前に収束する」と話す。ただし、不十分な情報発信は火に油を注ぐことがあるため、注意をしなければならない。蒲弁護士は「事実調査の間に、自然と鎮火に向かうこともある。事実調査と平行して、ネットでの動きを逐一監視することも必要」と指摘する。

 炎上対策において重要なのはスピードだ。「曜日や時間帯によって左右されるが、おおむね問題となる投稿が世に出てから4時間以内に対処できれば、炎上を未然に防ぐことができる」(菅原氏)。そこで大企業を中心に最近導入が進んでいるのが、ネットの監視サービスだ。SNSやネット掲示板などで「企業名」「不良品」といった単語を含む投稿がないかを定期的に確認し、あった場合は通知するというサービスだ。ネット炎上は、週末や午後7時以降から深夜にかけて盛り上がりやすく、一般企業が稼動していない時間帯におきがちだ。こうした実情に対応するために、サービスを提供するエルテスでは24時間体制で顧客企業に関する不適切な投稿がないかを確認している。