欠陥のある製品を納入したり、不祥事を起こして取り引きのある企業を巻き込んだり……。そんな「無責任な取引先」によって自社が損害を被った場合、損害賠償を求めて法廷闘争を繰り広げても、思ったような補償は勝ち取れない。では、どうすれば良いのか。企業間トラブルに詳しい弁護士への取材から見えてきた、「逆転の発想」による対処法を紹介する。

 神戸製鋼所、日産自動車、タカタ……。こうした企業による製品の安全性や品質の不備、そして製造過程における不正行為によって、消費者が不安を覚え、さらに取引関係のある幅広い企業の事業に悪影響を及ぼす“事件”が頻発している。

 「無責任な取引先」が納品した「欠陥部品」を使用したために自社製品の売り上げが打撃を受けたり、不祥事のとばっちりで風評被害を受けたりした場合、“加害企業”に対して損害賠償請求訴訟を起こしても、自社が被った損害額の一部しか取り戻せず、訴訟にかかる費用や時間を考えれば、徒労に終わることが多い(関連記事:「無責任な取引先にも優しい日本の裁判」2017/11/6公開)。

10月13日、神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長(中央)は、品質データ改ざん問題について記者会見し、会場に詰めかけた100人を超える報道陣の前で深々と頭を下げて陳謝した
不正が多数見つかったアルミ・銅製品を製造する神戸製鋼所の大安工場(三重県いなべ市)

「逆転の発想」で損失を取り戻す

 では、自社が取引関係を通じてこうした被害を受けた場合、どのように対処すれば良いのだろうか。

 「無闇に法廷闘争に持ち込んだり、取引関係を打ち切ったりするのではなく、敢えて不問に付すほうが得策です」。こう話すのは、企業間トラブルに詳しい林総合法律事務所の大城章顕弁護士。「法廷で損害賠償を請求する代わりに、今後の取引について交渉の機会を設け、取引条件を自社に有利な形に改めさせる。取引先の不祥事を、取引条件見直しの交渉材料にするわけです。訴訟を起こし、時間と費用をかけてわずかな補償を勝ち取るよりも、その方が、結果として得られる利益が大きくなる場合が多い」。

 言葉は悪いかもしれないが、不祥事を起こした取引先に「恩を着せ」、その後の取り引きの中で、損失を回収するというわけだ。