インテル幹部「まだ勝負は分からない」

 「まだAI用半導体のデファクトスタンダード(事実上の標準)は決まっていない。我々はAI用半導体のメインストリームが何になるかを現時点では想定していない。これが主流だと今の段階から打ち出すよりも、時流を読んでどの半導体が主流になっても対応できるようにする」。インテル幹部はこう反論する。

 インテルは言わずと知れた半導体世界最大手。パソコン用のCPU(
中央演算処理装置)で世界を席巻し、コンピューター業界の序列を変えた張本人だ。AI用半導体に関しても、「その規模を生かした全方位の逆襲を始めようとしているのだろう」(前出の外資系半導体大手の幹部)。

 グーグルが言う通り、エヌビディアが得意とするGPUも、インテルが注力するFPGAも、AIに特化した半導体ではない。日本では富士通がグーグルと同様に、AI専用の半導体の開発を進めている。それが「DLU(ディープラーニング専用AIプロセッサー)」だ。

 「DLUはディープラーニングに必要な機能だけに特化することで、同じ計算処理に必要な電力消費を10分の1に抑制して、エヌビディアに対抗する」。富士通でAI基盤事業本部長を務める吉澤尚子執行役員はこう語る。

 スマートフォン向け半導体世界最大手の米クアルコムも、車載半導体で世界最大手の蘭NXPセミコンダクターズを買収。車載を次なるターゲットに定める。

 「まだクアルコムの出方は分からないが、車載AI用半導体を開発するための買収であることは明らかだ」。日系半導体メーカーのあるエンジニアはこう話す。

 AIを巡る世界制覇の攻防。半導体はその一つに過ぎない。AIと人間の攻防戦やAIを活用した既存事業を巡る攻防戦——。連載の6回から8回では、今、世界中で起こっている争いを描きながら、企業がAIを無視できなくなっている現状を追う。