クルマを司るAIは“3人”いる

 「BB8」は、まるで人間のような振る舞いをしていた。

 司るのは、“3人”のAIだ。

 “1人目”のAIの名は「パイロットネット」。学習させたのはセンサーから得たクルマの周囲の画像ではなく、人間が運転するときのしぐさや目線、障害物に遭遇したときの避け方などの振る舞いだ。車線の有無や異なる時間帯、様々な気候条件などでの行動データをAIに学ばせた。

 すると、パイロットネットは運転する際に注意を払わなければならないポイントをAI自らが見つけ出した。例えば車線や対向車のボンネットのような場所に、AIは焦点を当てた。

 これはドライバーが普段、無意識に注意しているポイントと全く同じ。つまり自ら知識を獲得したのだ。エヌビディアによれば、既にBB8は数千キロを走破。パイロットネットの開発開始から18カ月が経過し、学習はほぼ完了しているという。

 “2人目”は「ドライブネット」。周辺画像を取り込んで、歩行者や自動車、バイク、交通標識などを判断する。わずか数時間の学習で、AIは交通標識の96%を正しく認識できるようになるという。「これまでのコンピューターでは、96%を達成するのに数年の開発環境が必要だった。光のようなスピードだ」。アウディ幹部はこう語る。

 “3人目”は「オープンロードネット」。文字通り、道路上のどの場所が安全で移動しても事故が起こらないかを周辺状況やクルマのスピードなどからAI自ら判断する。

 全てエヌビディアが自前で開発したAIである。

 チョンガー副社長は、今後の展開を次にように話す。「(BB8に)搭載しているAIは3つだが、完全自動運転には20〜30のAIが必要になるだろう。次々にAIを育てて搭載していくよ。それが、コンピューター業界のスタンダードだから」

 始まった競争軸の変化。新たな付加価値の源泉はAIであり、新たな業界の「支配者」はAIを使いこなす黒子である。単なるメーカーは、手足のように支配者に使われるだけだ。