デンソー幹部「GPUしか動かない…」

 トヨタは車載用の半導体を内製するほか、グループ会社のデンソーや、株式を保有するルネサスエレクトロニクスなどから調達している。自動運転の頭脳となる半導体を外資系企業から調達するのは異例だ。

 「いや、実はこのプログラムを動かせるのは、現状ではエヌビディアのGPUだけなんですよ……」。あるデンソー幹部はつぶやいた。同社が自動運転用のソフトウエア開発のデモで使用していたのがエヌビディアのGPUだった。

 デンソーはトヨタグループ最大の部品メーカーであり、1990年代後半からAI研究に着手。AIの専門チームも作っていることで知られる。そのデンソーの幹部をもってして、「唯一」と言わしめる技術的な優位性をエヌビディアは持つ。

 エヌビディアは全ての半導体製品の生産を外部に委託するファブレスメーカー。台湾積体電路製造(TSMC)と韓国のサムスン電子に製造を委託する。研究所の担当者は「両社に対してこの数カ月でエグゼビアのバグを潰す作業を依頼済みだ」と開発が順調に進んでいることを明かした。製品の市場投入は予定通り今年後半になる見込みだ。

 提携発表の会見を聞いたある自動車担当アナリストはこう言う。「この提携で、自動運転に関してはAI半導体のデファクトスタンダード(事実上の標準)はエヌビディアのGPUで決まりだろう」

 エヌビディアはドイツ勢ではフォルクスワーゲン、アウディ、ダイムラーと既に提携。米国勢ではフォード・モーターに加えて、EV(電気自動車)のテスラとも協業する。その列にトヨタも加わることになったからだ。

5月10日の会見でトヨタ自動車との提携を発表するエヌビディアCEOのジェンスン・フアン氏(写真:林 幸一郎)

 トレードマークの黒い革ジャケットを身にまとって壇上に立ったジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)はこう語った。「自動車業界のレジェンドとの協業は、自動運転の未来がすぐそこまで来ていることを強く示している」