本社潜入、トヨタが惚れた製品を発見

 「もうデバッグ(ミスを見つけて手直しすること)はほぼ終わっているよ」

エヌビディア本社の一角にある開発施設。量産前製品の最終テストが進む(写真=林 幸一郎)

 BB8が走っていたニュージャージー州から西へ約4000km。シリコンバレーに位置するエヌビディア本社の研究施設に潜入した。スーパーコンピューターが所狭しと並ぶこの施設は、メディアにほとんど公開されていない。製品が使われる環境をスーパーコンピューターで再現し、開発中の製品を量産前にテストする機能を持つ。

 その一室に、トヨタが惚れたエヌビディアの製品があった。

 GPU(画像処理半導体)──。エヌビディアが世界シェア8〜9割を持つ半導体である。同社の主力製品であるGPUには、圧倒的な強みがある。同時に複数の計算をこなす「並列演算」がずば抜けて得意なことだ。

 パソコンに必ず搭載されているCPU(中央演算処理装置)は「A」という計算の後に「B」という計算をする「逐次演算」に向く。演算装置という点では同じだが、例えるならば、GPUは数千人が同時に計算をする研究所であり、CPUは1人の天才の頭脳のようなものだ。

 AIは自動車の“頭脳”になる。ただし、AIもコンピューターの中で動くプログラムの一種。スムーズに頭脳を回転させるには、高性能な半導体が必要だ。

 つまり、AIは「超」が付くほど高性能な半導体がなければ動かない。そこに商機があると感じ、半導体メーカーに加え米グーグルなどのIT(情報技術)大手も自前の半導体開発に向けて動き出した。

 AIによる世界制覇の動きの一つは、半導体をめぐる主導権争いである。

 まだ勝者は決まっていない。ただ、トヨタが選んだのはエヌビディアのGPUだった。トヨタは、「エグゼビア」とコードネームで呼ばれる次世代GPUを自動運転の“頭脳”としてクルマに取り込む。

 5月10日、米カリフォルニア州サンノゼで開かれた会見で、エヌビディアはトヨタとAI(人工知能)を使った自動運転車の開発で協業すると発表。エヌビディアが開発中の次世代GPUを、トヨタが実際に製品化する自動運転車に搭載するだけでなく、両社は自動運転の実現に向けたソフトウエアも共同開発する。